絵心はいらない!3ステップの「ラクガキ」でアイデアが生まれるメソッドとは?
公開日:2016/10/23
「夢はラクガキで世界を変えること!」という思いから、デザイナーとして働く傍ら、ラクガキコーチとして全国でラクガキ講座を開催する、『アイデアがどんどん生まれる ラクガキノート術 実践編』(エイ出版社)の著者・タムラカイさん。たかがラクガキと思いがちだが、本書のタイトル通り、次々とアイデアが生まれて仕事に活用できるメソッドがあるなら、ラクガキを侮ってばかりはいられない。
本書によると、「ラクガキは文字とビジュアルを同時に扱い、それらを『描く』という行動によって表現するため、頭の中だけで考えたり文章で表現する以上の成果が出る万能ツール」だという。しかもラクガキは「落書き」ではなく「楽描き」。つまり子供の頃のように落書きを楽しみながら描くだけで、誰もが自分の中にあるクリエイティブな力を引き出せるようになるという。
ただ絵心のない人には、落書きでさえハードルが高い。だからこそ本書は初心者のために、基本になる口と目の5つの表情、さらに4つある眉の表情だけで、どんな表情も描き分けられる「5×5×4で100の表情を描く」からスタート。さらに「文字を描く」では、文字もフォントのようにラクガキで自由に描くことで印象が変わること、また吹き出しを使って感情が表現できるなど、12のテクニックが説明されている。
こんな風に誰でも簡単にラクガキが描けるようになると、あとはビジネスに活用するだけだ。本書によると、実際にラクガキからアイデアを生み出すためには、観察・想像・表現という3つのステップがあるという。つまり「問題をよく見て観察すること」で問題を発見し、「さまざまな角度からたくさん考えること」で本質をつかみ、「不完全でもとにかく表現してみること」で価値を生み出すことができるようになる。ここからはラクガキを描くというスタイルから、著者の肩書でもある“ラクガキコーチ”が指南するビジネスアイデア発想法のモードに変わるのも面白い。
ところで、なぜ今ラクガキなのか。「ラクガキの利点は、言葉では表現できないイメージを相手に伝えられること」である。SNS全盛の現代は、さまざまな価値観をもつ人たちと、共に楽しみあえるつながりを創ることができ、さらにこれまでにない新たなものを生み出す可能性もある。その時に非言語的なコミュニケーションツールとして役立つのが、ラクガキだという。「たくさんの人がラクガキをしながら新しい製品やサービスや仕組みを作り、この世界がもっと良くなっていく、それが私の描く理想の未来」とあとがきにもある。まさにこれが、冒頭にもある著者が夢見るラクガキの姿であろう。
芸術の秋、そして読書の秋。「描いて考え、伝えられるようになると、あなたの仕事の効率は何倍にも加速します。まずは紙とペンを用意して、ラクガキしてみることからはじめてみましょう」とあるように、本書でラクガキという芸術の秋を味わい尽くすのもいい。もちろんアイデア発想法やデザイン思考を、プロのデザイナーから学ぶことができるビジネス書として読むのも悪くない。
文=富田チヤコ