『おくりびと』『仁−JIN−』も手掛けた、特殊メイクのプロ・江川悦子さんが教える“ハロウィンメイク”!【実践テクニック】
更新日:2016/10/28
テレビやCMを観ていると、若手俳優が急におじいちゃんになって登場したり、キレイな女優さんがおそろしい獣に変身したり。はたまた、人間の姿とはかけ離れたナゾの生命体になって登場したり……。誰しも、そんな場面にアッと衝撃を受けたことがあるはず。たとえば……。
この魔法のような大変身は、特殊メイクによるもの。今や映像作品になくてはならない技術だが、すべて人の手によってつくられたものだ。これらの作品を手がけたのは、特殊メイクアップアーティスト・江川悦子さん。江川さんの作品と、そのプロフェッショナルな特殊メイクの技術を一冊にまとめたのが、『江川悦子の特殊メイクアップの世界―異次元の扉が開かれる!』(主婦の友社)だ。
江川さんが特殊メイクの世界に飛び込んだきっかけは、映画『狼男アメリカン』(1981年)の、青年が狼男に変身するシーンに衝撃を受け、「どうすればこんなことができるんだろう?」と興味を惹かれたことだった。当時ハリウッドに住んでいた江川さんは、さっそく現地のメイクアップ専門学校に入学し、特殊メイク技術を学び始めた。卒業後はハリウッドの映画スタジオで助手としてキャリアをスタート。あの『ゴーストバスターズ』のプロジェクトにも参加したという。1986年に日本に戻ると、特殊メイク制作会社「メイクアップディメンションズ」を立ち上げ、日本の映像業界の特殊メイク普及に貢献。現在にいたるまで、特殊メイクのプロフェッショナルとして活躍し続けている。
ハロウィンにも大活躍! 特殊メイクをやってみた
『江川悦子の特殊メイクアップの世界』では、江川さんの作品だけでなく、誰でも特殊メイクにチャレンジ出来る実践ページを多く掲載。必要な道具やメイクの工程を基礎からわかりやすくレクチャーしてくれるので、特殊メイク初心者にもピッタリの入門書となっている。
「基本編」では、「やけどメイク」や、「ゾンビメイク」など、ハロウィンに活用できる傷メイクのバリエーションが豊富に紹介されている。目前に迫ったハロウィンで、仮装ネタを考えあぐねている人にもヒントとなりそうなページが盛りだくさんなのだ。
そこでさっそく、特殊メイク初心者の2人が実際にやってみた!
《基本アイテムはこちら》
傷の土台となる人工皮膚をつくるための特殊素材「メークアップワックス」や「ラテックス」。リアルな表現に欠かせない血のり、赤と黒の顔料や、メイク専用の黒スポンジなどの本格的なアイテム、東急ハンズで揃えた。そのほか、ファンデーションやコンシーラーなどの化粧品、ウレタンスポンジやメイク筆、竹ぐしは100円ショップも利用した。薬局で売っている軟膏や綿棒、コットンも用意すれば、準備は完了!
※本書を参考のうえ、入手できたものでアレンジして再現。
《金属で切った傷&すり傷メイク》【さっそくやってみた!】
まずはハロウィンの定番、ゾンビメイクにも使える傷メイクに挑戦!
(1)「メークアップワックス」を薄く伸ばして、傷に近い形をつくる。はじめは固まっている状態なので、適量を取ったら手のひらで暖めながらこねてやわらかくする。
(2)上から「ラテックス」を重ね、肌に密着させる。
(3)ワックスの上から、竹ぐしで傷をつける。ためらわず、一気に竹ぐしを入れるのがポイント。
(4)傷の内部に濃い赤の顔料で着色し、黒を重ねる。傷口と周りに赤を入れてぼかす。
(5)傷口の上に血のりを垂らして、よりリアルな血液の演出を。
(6)赤、黒の顔料を専用の黒スポンジでポンポンと軽くたたき、すり傷をつくる。その際は強くこすらないように注意しよう。
(7)メイクした部分を乾かして、完成!
※本書を参考のうえ、入手できたものでアレンジして再現。
よりリアルなメイクに近づくためには、背景にあるドラマを具体的にイメージすることが大切! と同書で江川さんが語るように、各メイクには必ず細かな設定が書かれている。
これは、「急停車した車をよけようとしてバイクごと転倒。アスファルトで顔と腕をこすり、車体の金属部分で顔を切ってしまった」という傷。
自然と、本当に痛みを感じているような表情に……。
近くによってみると、こんな感じ。
ポイントは、血の色に黒を取り入れて「事故現場は道路」というリアリティを演出したところ。さらに、血のりはどろっとしたタイプのものを使用し、生々しさを表現。パックリと裂けた傷口が、痛々しい仕上がりに。見ているだけでもおそろしくなってきたぞ。
《こちらはSTRONGな化けネコ!?》【さっそくやってみた!】
続いては、なんと人外への変身にチャレンジ!
(1)「ワックス」を塗りこんで眉毛を消す。ファンデーションで地肌と馴染ませる。
(2)黒や赤の顔料で目や鼻、唇にペイント。小鼻を広く塗りすぎると、コメディタッチになってしまうので注意しよう。
(3)最後につけひげをつけ、強さを表現。
不器用な私たちにも、本当にできるだろうか……? という当初の心配をよそに、いざ始めてみると、作業はワイワイと楽しく進行。とりわけ難しい技術は必要なく、どちらも1時間ほどで完成した。本番のハロウィンが待ち遠しくなる仕上がりに。ネコに変身した友人いわく、「今にも街に躍り出たい気分だニャー!」とのこと。
さらに「応用編」では、より本格的な特殊メイクにチャレンジすることもできる。「鳥DIRTY」、「宇宙人INTELLECTUAL」、「猿SERIOUS」など、名前だけでは想像もつかない特殊メイクが満載だ。ここまでやり込めば、どのハロウィンパーティーに出かけても大注目は間違いなし!
今年のハロウィンは、「特殊メイク」の世界に触れて、大変身を果たしてみてはいかがだろう。
文=泉井眞衣(清談社)