「ブスだってがんばってるんだよォ」! 卑屈すぎる新自虐系JK喪女コメディ『ブスに花束を。』
公開日:2016/11/5
女子力とはおよそ遠く、男子にモテない……いや、恋愛そのものを諦めたように見える女子──喪女が主役のマンガが絶好調だ。代表的なのは、見た目微妙、挙動不審、性格後ろ向き。だがその実、繊細で素直なところが憎めない喪女が主人公の『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(谷川ニコ/スクウェア・エニックス)。デブだった腐女子(=男同士の恋愛妄想を楽しむ女子)が、痩せたとたんイケメンたちにモテモテになってしまう『私がモテてどうすんだ』(ぢゅん子/講談社)も変わらずの人気で、10月からTVアニメが放映されている。
さらに『影野だって青春したい』(北川夕夏/講談社)、『アナグラアメリ』(佐藤ざくり/集英社)など、面白い喪女マンガが続々と登場している。そんな喪女マンガ界に登場した、自虐系喪女の物語『ブスに花束を。』(作楽ロク/KADOKAWA)。第1巻が11月4日(金)に発売された同作の主人公・花が、早速読者の共感を呼んでいる。
ダサい膝丈の制服に身を包み、そばかすの浮く顔にはヲタクメガネ。「トリートメントって何それおいしいの?」と言わんばかりのボサボサの髪。そんな見た目の主人公・田端花は、高校入学早々女子グループに入りそこね、彼氏どころか女友達すらできないぼっち生活を送っていた。しかしそんなブス……いや、花にも生きがいがある。それは、毎朝誰も居ない時間に学校へ来て、教室に飾る花を取り替えること。美化委員で花いじりが好きな花は、人目を避けた早朝の教室で「花を触ってる時のいい女感」をひとり楽しんでいた。そこへ、ある日事件が起きる。ほんの出来心で、髪に花を挿してひとり悦っているところを、クラスメイトの男子に見られてしまったのだ。
その男子こそ、クラスカーストのトップに属するイケメン・上野陽介だった。これが少女漫画なら…「ずっと君を探してたんだ」などと微笑みながら、イケメンが手を差し伸べる──そんなシーンを頭に浮かべるが、そんなわけあるか!とコンマ1秒で判断した花は、とっさに財布からお金を取り出そうとする。ブスがいい気になって髪に花を挿していたなんて、悪口拡散材料でしかない。そうだ、お金で口止めをしよう……!しかしイケメン上野は、顔だけでなく、マインドも超イケメンだったのだ――。
喪女に限らず、よほどの自信家でなければ「私(僕)なんて…」「私(僕)なんかが…」という思いは心のどこかにあるものだ。花の卑屈な自意識は、喪女でなくとも、読む者の中にある“自虐あるある”として共感されているのだろう。
また、花の計算のない素直さや謙虚さがかわいくも感じられ、「もっと自信を持て!」と応援したくなる。そう、見た目がブスでも、内面が魅力的であれば女はかわいくなれるのだ。
花は今のところ、上野への憧れめいたものは意識しつつあっても、それによって外見を磨こうと励むこともなければ、地の底を這うような自意識が急浮上するわけでもない。内面の素朴さだけを武器にイケメンを迎え撃つ主人公は、リアル喪女にとって、ある意味夢と希望を与えてくれる。
ブスはブスのままなのか?それとも、めばえはじめた恋心がブスに変化を起こすのか──。喪女・花の自虐あふれる青春と恋の行方に、ページをめくる手が止まらなくなること必至の大注目作品だ。