根性論では部下は動かない! イマドキ社員に成果を出させるデキる上司になる『課長の技術』

ビジネス

公開日:2016/11/8

『課長の技術 部下育成バイブル』(石田淳/日経BP社)

「平均年齢50歳」。これは2020年の東京オリンピック時の日本人の平均年齢の予測です。少子高齢化により、外食チェーン、建設業、運送業、コンビニ業界などでは人材不足が叫ばれており、将来的にはすべての業種でも起こり得る問題として、若手の人材育成が企業の最優先課題となっています。

課長の技術 部下育成バイブル』(石田淳/日経BP社)では、行動分析に基づいた「行動科学マネジメント」という手法を用いて、部下に成果を出させるデキる課長の心得を説いています。イマドキの若い社員は、積極性がなく、出世欲がなく、根性がなく、ちょっと叱るとすぐに辞めてしまう。「自分の若い頃はあんなではなかった」と嘆く声がよく聞かれますが、労働の仕組みや目的が多様化した現代では、課長世代の「根性論」こそ非常識で理解は得られません。本人のためを思って厳しくしたつもりでも、ネットやSNSで晒されてブラック企業のレッテルを貼られてしまう危険性もあります。

 そうならないために、いまの部下に悩める課長世代の間違った思い込みを「行動科学マネジメント」により指摘しています。

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モチベーションを禁止する

 まず仕事の生産性を向上させるには、部下の「モチベーション」に頼ってはならないといいます。本来、部下に仕事のやり方を教えるのが課長の仕事であるのに、何が悪かったのか、正しいやり方がわからないままでは部下は成果を出せません。行動科学マネジメントでは、「やる気を出せ」という曖昧な指示ではなく、具体的な数値を重視します。例えば、営業成績が低下しているなら、顧客への対応は1日何回、何分かけているのか、受注率や解約率はどのくらいかなど、うまくいかない現状の問題点を検証して修正していくのです。ニュートラルな状態で、誰がやっても結果を出せるノウハウや仕組みを作り定着させるのが有能な上司だとしています。

トータルリワードでチームワークを確立する

 いまの若い社員が働く理由は課長世代とは違います。給料や出世では動きません。部下を動かすには、ひとりひとりが働きたいと思える動機を満たしてやる必要があます。本書では、これらを「トータルリワード(非金銭的報酬)」として6つに分類しています。

(1)“Acknowledgement”(感謝と認知)
相手を仲間として認め、感謝する
(2)“Balance”(仕事と私生活の両立)
私生活を仕事の犠牲にせず充実させる
(3)“Culture”(企業文化や組織体質)
自由に意見を述べられる職場であること
(4)“Development”(成長機会の提供)
仕事を通じて成長を実感する
(5)“Environment”(労働環境の整備)
ストレスなく働きやすい環境作り
(6)“Frame”(具体的行動の指示)
結果への行動を明確に示してくれる

 部下とチームワークを育むには、これらのトータルリワードの実現に取り組むことで、確実に業績はアップしていくのだと語ります。

「ほめて伸ばす」は最大の武器

 ここで「部下をほめるくらいはいつもしている」と思う課長さんもいるかもしれません。ある調査で「どれくらいの頻度で部下をほめているか?」という質問をしたところ、上司の回答の平均は「1日2回」でした。ところが、その部下に「どれくらいの頻度で上司からほめられているか?」と質問すると、回答の平均は「月に2回」と、両者の認識にかなりの開きがみられたといいます。上司のほめ言葉はおよそ20回に1回しか部下に届いていないのです。自分自身が叱られて育った課長世代は無自覚な「ほめ下手」だったのです。いまの部下をほめるときには、いままでよりも直接的でわかりやすい言葉を用いる必要があります。行動科学マネジメントでは「4対1の法則」というものがあり、4回ほめて1回叱るくらいがちょうどいいとされています。

一番重要なのはセルフマネジメント

 本書では、デキる課長になるために、さまざまなヒントを与えてくれていますが、一番重要なのは「自身が心身ともに健康でいること」なのだそうです。というのも部下との関係がうまくいかずにうつ病になってしまったり、仕事優先で身体を壊してしまったりというケースが多いのです。目先の仕事に追われているうちに「新しい時代に通用しない課長」になってしまわないように自分自身を見つめ、普段の生活から健康を意識した運動や食事を心がけるようにと訴えています。

 最後に厳しい一言ですが、「売り上げ数字と同じくらい、自分の体重をシビアに見つめよ」とも。部下の管理よりも、自分の体調管理のほうが、世の中の課長さんには難題かもしれませんね。

文=愛咲優詩