健康診断「B判定」が一番危ない! ひそかに病気が進行? 血清脂質、血圧、血糖値がB判定でも心臓病の危険が31倍に!?
公開日:2016/11/8
読者は健康診断をきちんと受けているだろうか。『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(奥田昌子/青春出版社)によると、健康診断でB判定をもらった人こそ、普段の生活習慣を見直し、自身の健康と向き合ってほしいという。B判定は経過観察という意味だが、この経過観察は「現状維持で良い」という意味では全くない。B判定には「隠れ糖尿病」「隠れ高血圧」などの予備群がまぎれこんでおり、数年後には、B判定のうち4人に1人が糖尿病に、2人に1人が治療を必要とする高血圧に移行しているのだ。B判定とは、病気のベルトコンベアに乗った状態であり、そのまま「現状維持」してしまうと、どんどんベルトコンベアの奥深くへ進み、病気になってしまう。本書は、健診医として20年間で20万人以上診てきた京都大学医学博士の奥田昌子氏が、B判定の恐ろしさと健康になるための方法を紹介している1冊である。
メタボリックシンドロームを知らない方は少ないだろう。病気の総合デパートになってしまう不健康な体のことだ。メタボの診断基準は「内臓脂肪の蓄積に加えて、高血糖、脂質異常症、高血圧のうち、2つ以上あてはまる状態」だそうだ。上記の3つは、ちょっとばかり基準値を超える程度なら、経過観察ということでB判定が出る。つまり、血糖値と血圧がB判定であり、内臓脂肪が蓄積されていたら立派なメタボなのに、B判定という安心にも似た診断結果によって、メタボという事実が薄れてしまう。「内臓脂肪の蓄積なし&全てA判定の人」と「内臓脂肪の蓄積あり&3つ全てB判定」の人を比べると、心臓病の危険が31倍にふくれあがるという。B判定の恐ろしさが伝わっただろうか。
心電図がB判定の人も注意した方がいい。まず、心肥大と高血圧の人だ。心肥大とは、心臓の壁が分厚く硬くなった状態を指す。確かに心肥大は高血圧が引き金となるが、血圧がB判定程度で心肥大になるのは考えにくいそうだ。別の心臓病の可能性か、もしくは「仮面高血圧」かもしれないという。「仮面高血圧」とは、起床したときだけ異常に高血圧になったり、仕事やストレスを感じた瞬間だけ異常に高血圧になったり、健康診断だけでは測れない高血圧の症状のことだ。「仮面高血圧」なら心肥大になる可能性も十分考えられる。このB判定を放っておくと、悲しい人生の結末を迎えることになる。また、頻脈と貧血の人も注意すべきだ。貧血をなめている人が多いが、心臓は酸素不足を補うために必死になって拍動を増やし、酸素を全身に送り届けようとしている。頻脈であり、貧血の状態を続けると、やがて不整脈や動悸が起こるようになり、心臓の機能が低下して、最悪の場合、死に至る。貧血は、ありふれていながら正しい知識が広まっていない病気である。
本書では、まだまだ恐ろしいB判定の事例を述べているが、キリがないので、今回はここまでとさせていただく。健康診断でB判定をもらった方は、ぜひ本書を手にした方がいい。もっと言うなら、健康診断すら行けていない人は、今すぐ受けに行った方がいい。医学を持たない素人が考える健康とは、とてもあいまいなもので、失わないと気づけないからだそうだ。
文=いのうえゆきひろ