世界一の観光都市“京都”に潜む、あまりに深く、暗い闇の部分とは…
公開日:2016/11/17
日本を代表する観光地といえば北は北海道、南は沖縄。新宿や浅草、秋葉原を擁する首都・東京にもたくさんの観光客が訪れる。中でも、修学旅行の聖地というだけでなく、外国人旅行者からも人気が高いのが京都だ。アメリカの大手旅行雑誌「Travel+Leisure(トラベル・アンド・レジャー)」では、昨年まで2年連続“観光世界一”の座に輝いている。
国内外から支持を集めている京都。その京都の知られざる側面を紹介しているのが『京都の裏社会 山口組と王将社長射殺事件』(一ノ宮美成+グループK21/宝島社)だ。京都といえば八つ橋、お寺、舞妓さん、はんなりほどの知識しか持たない、生まれも育ちも関東の私。はたして、京都にはどのような闇があるのだろうか…。
2013年12月19日、年末年始に向け、世間が慌ただしくなる師走の早朝。京都市内に本社を構える、大手外食グループ「王将フードサービス」の社長・大東氏が何者かに射殺された。事件の背景には、とある人権保護団体の元幹部との蜜月関係や、その裏に潜む暴力団の影、とあるゴルフ場への迂回融資、三代目社長の長男の失踪事件などがあるという。社長殺害の犯人はいまだに見つかっておらず、迷宮入り状態。京都が抱える闇の一端を外食産業の大手「王将」グループが担っている。
京都の寺社仏閣にも知られざる側面が存在する。本書で記載されているのは1000年以上の歴史をもち、豊臣秀吉の「醍醐の花見」で有名な世界遺産・醍醐寺。この醍醐寺が新興宗教に侵食されつつあるのだという。その新興宗教が醍醐寺に対して、不透明で巨額な金銭授受があるそう。さらに、新興宗教の教祖が人気フォークデュオメンバーの母であり、理事長が兄だというから驚きである。メンバー本人も醍醐寺幹部へ結婚の挨拶に出向いたり、ライブに招待したりとなかなか熱心なご様子。宗教同士の“架け橋”となっているようだ。そもそもなぜ、醍醐寺に多額の金や労力をつぎ込んでいるのだろうか。それは、新興宗教として“ハク”がつくからだ。醍醐寺は弘法大師・空海を開祖とする真言宗の寺院として、中学・高校の歴史で習うほど有名。そんな寺院と近しい関係にある、これをアピールしたいのだ。近年、新興宗教の勢いがあまりにも強く「完全に乗っ取られた。残るのは教義だけ…」と醍醐寺関係者が悲しくつぶやいているそう。
他にも、山口組と京都ヤクザとの関係や、京都を代表するタクシー会社、パチンコメーカーといった京都の裏社会で暗躍するという組織について書かれている。私の不勉強もあるかもしれないが、どれも「そうだったのか…」と思わせられるものばかりだ。
京都市は昨年、5684万人が観光に訪れ、9704億円の観光消費を生んだ。いずれも過去最高の数値。大勢の人が動き、巨大な金の流れができる京都はまさに光輝く都市だ。しかし、強く光れば光るほど暗い闇が存在する。京都のもうひとつの顔を垣間見ることで、表の顔がより鮮やかに感じられるかもしれない。
文=冴島友貴