8カ月の子ネコが発見された意外な場所とは? ネコ好きにはたまらない!ネコの真剣な話
公開日:2016/11/26
見た目の可愛さと、散歩がいらないなど現代人のライフスタイルに合う飼いやすさを持つネコ。2014年から始まった「空前のネコブーム」で、その経済効果は「ネコノミクス」とも呼ばれている。『ネコがこんなにかわいくなった理由』(PHP新書)は、生物学者である黒瀬奈緒子氏による、DNAレベルからネコを学べる一冊だ。
本書によると、ネコとヒトの同居の歴史を示す最古の形跡は、2004年に地中海のキプロス島で発見された9500年前のお墓にあるという。8カ月の子ネコが、ヒトから40センチ離れた小さなお墓の中にヒトと同じ西向きに埋葬されていたのだそう。地中海の島に野生のネコ科動物はいないので、近くのレバント(東部地中海沿岸地方)あたりから連れてきたものと推察されている。また2900年前には、ネコは「バステト女神」という形でエジプトの正式な神とされているのだ。ネコは太古の昔からヒトに愛されて、信仰の対象にまでなっていたことがわかる。
しかし自由奔放なネコがなぜヒトのペットになったのだろうか? 一般的な家畜は草食だが猫は肉食。昔の家に、ネコに与える肉などなかっただろうし、家にネコを閉じ込めておくのは困難だったはず。こうしたことから、ネコは「自ら飼われた」と考えられていると著者は記す。ネズミやヒトの出したゴミを食料とし、外敵から身を守るためにも、ヒトと生活すると都合がよかったのだ。どうやら、DNAレベルでネコはちゃっかりしているようだ。
ではペットとなったネコの祖先は何だろうか? 2007年に行われた、ネコの遺伝子の解析により、30種以上いるネコ科の中で、中東の人里離れた砂漠にすむ「リビアヤマネコ」だけが我々と暮らすネコ(イエネコ)の遺伝子をもっていることがわかったという。リビアヤマネコは、ヒトにたいして警戒心が弱く、なつきやすい性格である。ヒトの貯蔵した農作物を狙ったハツカネズミを狙い、ヒトの近くに住むようになったことが、ヒトに近づいた始まりだと考えられている。
ネコはどのようにして日本に来たのだろうか? ネコが最初に登場した日本の書物は、平安時代初期に書かれ、死んだ人がネコに生まれ変わるという話が載っている『日本霊異記』(にほんりょういき)。また『源氏物語』や『枕草子』などにも登場していたことから、8世紀頃に遣唐使が大陸から連れてきたと考えられてきたが、2008年に、長崎県壱岐島(いきのしま)にある弥生時代中期のカラカミ遺跡で、ヒトに飼われていたとみられるネコの骨が見つかった。これが約2100年前の国内最古のネコの骨で、穀物を守るために大陸から運ばれてきたとみられるそうだ。
ヤマネコのかわいさに魅かれたヒトが、家族の一員として愛したことで誕生した「ネコ」。「真剣なネコ本」として、解剖学者・養老孟司(ようろうたけし)氏も推薦する、ネコの魅力にますますハマる、一冊だ。
文=泉ゆりこ