SNSで増殖する「盛りたがる」人たちの正体。自分をよく見せるための「偽装」を現役精神科医が分析!
公開日:2016/11/30
「自分を良く見せたい」。そう思うのは自然なことだ。その思いが強くなり、SNSなどで、内容を少しだけ「盛って」しまうこともあるかもしれない。「盛る」ことで、相手が喜んでくれるなら、悪いことではないように思える。一方で、そうとは知らずに、「盛られた」情報に翻弄されて、苦い思いをすることもあるだろう。特に、過度に盛られた情報は、「嘘」や「偽装」といわれる可能性も大きい。例えば、STAP細胞の小保方氏、号泣会見の野々村元県議、学歴・経歴詐称が発覚したショーン・K氏。ここ数年でマスコミを騒がせてきた3人に共通するのは、事実を偽装した(または疑惑をかけられた)ということだ。
しかし、なぜ、そこまで「盛って」しまうのだろうか。『自分を「平気で盛る」人の正体』(和田秀樹/SBクリエイティブ)では、いまの日本が、盛ったほうが生きやすい時代になっており、SNSなどの普及によって、「盛りたがる」人が増加する傾向にあると指摘。精神科医でもある著者が、専門知識に基づいた分析を行っている。
AO入試が「盛りたがる」人を増やす可能性
AO入試という制度をご存じだろうか? アドミッションズ・オフィスの略で、「学力試験ではなく、出願者の高校時代の活動や面接・小論文・推薦状などにより合否を決める入学試験」(出典:広辞苑)のことだ。つまり、ペーパー試験のみで評価される一般試験とは異なり、人柄なども含めて多面的に評価されるということ。著者は、小論文や面接では自分を盛ることが可能であり、論文の担当官や面接官に好印象を与えれば、合格の可能性が高くなると指摘。そうやって合格した人が卒業して社会に出ていくことになり、そもそも日本の教育システムが、自分を盛りたがる人を生み出しやすいものになっていると言及している。
SNSで増殖する「盛りたがる」人たち
本書では、自分を盛る人の増加に拍車をかける要因のひとつとして、SNSの普及を挙げている。確かに、事実を盛った情報は魅力的に見えそうだ。SNSのサイトで、自分と同じような日常の様子を見るのと、華やかな世界を見るのとでは、受ける印象も違う。「いいね!」の数が増え、投稿した本人も注目されれば嬉しいだろう。しかし、なかには悪質なものもあるので注意すべきだと著者は指摘する。例えば、SNS経由で仕事を依頼する場合。嘘ではなくても、相手が経歴や能力を盛っていた場合、思ったような結果が出ないこともあるだろう。その結果、金銭的な損失を被る可能性もある。もちろん、会って話しても見抜けないこともあるが、ネットを経由すると、そのリスクは確実に高まるのだ。
自己愛性タイプと演技性タイプ
では、必要以上に盛ってしまう人というのは、どんな人なのか。本書では、「自己愛性」と「演技性」という2つのタイプに分けて解説されている。演技性タイプとは、常に波瀾万丈なドラマの主人公を演じているような人で、芝居がかった言動をとることが多い。自己愛性タイプは、自分を誇大に見せて称賛を得ようとする傾向にあり、他人の気持ちへの配慮に欠ける。著者によれば、タイプは違うものの、どちらも自分が主人公になりたいという願望が強いので、盛りたがる傾向が強くなるという。このような傾向が強い人が周りにいる場合は、振り回されないよう注意が必要だ。
自分を盛る人がいるということは、それに騙されてしまう人もいるということ。本書では、自分を盛る人の特徴や、それに騙されてしまう理由など、具体例を挙げて分かりやすく解説されている。盛りたがる人に翻弄されて、判断を誤ったり、大切な時間を無駄にしたりしないためにも、ぜひ参考にしていただきたい。
文=松澤友子