ヤクザと幼少期をともにした著者が描く、ヤクザの実態
更新日:2016/12/19
刑事モノのドラマや映画によく登場するものの、その実態についてはあまり知られていない「ヤクザ」という存在。とはいえ、たとえ知りたくても近づくことなんて怖くてできないものだ。でも、そう言われてしまうと、余計に知りたくなってしまうのが人間の性。“怖いもの見たさ”を抑えられないという人も少なくないだろう。
そこで、ヤクザの世界を知るための教科書としてオススメなマンガが登場した。それが『ヤクザから聞いた話がおもしろすぎるんでマンガにしてみた』(カツピロ/竹書房)だ。本書の作者であるカツピロさんは、幼少期にヤクザのおじさんと過ごした経験を持つ人物。そのため、本書には非常にリアルな彼らの日常が描かれている。
カツピロさんの両親は、借金返済のため日夜働き詰めだった。そのため、子どもだったカツピロさんは近所にあるおじさんの家に入り浸っていたそう。おじさんは一見怖そうだが、とてもやさしい人。カツピロさんをいつもかわいがってくれ、ショバ代の取り立てや賭博場など、どこに行くのも一緒だったという。ただし、刑務所を除いては。……うん、当たり前だろう。
おじさんの家にはヤバそうなものがたくさんあり、ガサ入れを察知すると、カツピロさんの家に荷物を預けに来たそうだ。大量のトランクやロシア語が書かれた木箱、時にはアジア系外国人女性2人まで。さらに、夜中に軽トラを飛ばし、ダムへ一斗缶を大量に投げ込んだこともあったという。しかし、その中身はいまだにわからないのだとか。……想像するのもおそろしい。
そんなヤクザにとっての天敵なのが、ヒットマンだ。しかし、ヒットマンなんてうまみがないため、イマドキなり手は皆無。それでもその存在がなくならないのは、アジアで一番大きい国からヒットマンが“輸入”されているから。彼らは一泊二日で日本を訪れ、1回10万円でミッションを遂行する。しかも、すぐに国外逃亡してしまうので見つかりっこもない。ヤクザにとっては、非常に強敵なのである。……言わば、出稼ぎヒットマンだ。
ここまで読んで、まるで別世界の話だと感じた人もいるだろう。しかし、意外なところにもヤクザとの接点はある。それは、通販番組。量販店ではとても高価で手が出せなかったはずの商品が、なぜか通販番組で安く売られていた、という経験をしたことはないだろうか? 実は、その裏にはヤクザの存在がある。彼らは売れ残った商品の現金化に悩むメーカーの前に現れて、商品を安く売りさばき、中間マージンを取っているのだ。だから、「企業努力でこの価格!」などと謳われている商品があったら、そのバックにはヤクザがいるのかもしれない。……これも“企業努力”の一種であることに間違いはないが。
その他にも本書には、ヤクザネタがわんさか出てくる。カツピロさんが目撃した事件や、取材を通して明らかになった事実、そのどれもがもはやファンタジーの世界。けれど、なぜか彼らが憎めないのは、カツピロさんのほんわかしたイラストによるところが大きいだろう。コメディタッチに描かれているので、「こんな世界もあるんだね~」と軽い気持ちで読めるはず。ただし、これだけは言っておこう。犯罪はダメ、絶対!
文=五十嵐 大