なぜ分数の割り算はひっくり返すのか? 数学ギライの人のためのやり直し講座
公開日:2016/12/6
突然だが、読者は「分数のわり算は、わる数をひっくり返して答えを求める」理由をご存じだろうか。大半は知らないだろう。私も知らなかった。学校の先生方もイマイチ理解できていないかもしれない。『なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』(板橋悟/主婦の友社)に、その答えが書かれている。
あなたはそもそも、「分数で割る」ことの意味を考えたことがあるだろうか?これを説明するにあたって、板橋氏は、数学には「イメージ力」が必要だと説く。本書では、上記の「分数のわり算は、わる数をひっくり返して答えを求める」理由を、ピザやリンゴを使って実生活に置き換えながら分かりやすく解説している。この「イメージ力」を身につけると、数学が分かりやすくなるのだ。
とはいえ、この世には「数学アレルギー」をお持ちの方が山ほどいる。私などは数学アレルギーをこじらせ、数学の完全撤廃を掲げ、選挙に立候補しようか考えているくらいだ。しかし板橋氏は、「数学滅びよ」の横断幕をせっせと作る私に、本書でこう諭している。
そもそも、みなさんは数学が苦手なのではありません!数字や計算式をみるとぞわっとしたり、遠い目をしたり、逃げたくなったり、思考が止まったりするとしたら、それは単に「数字」や「計算」がキライなだけ!「数学がキライ」とはまったくの別物です。みなさんが好きになれる数字が、この世に必ず存在します。
確かにそうだ。学校や入試で必要だった数学は、とにかく答えを求める力だった。答えが求められないから、数学に苦手意識を感じ、キライになっていった。しかし本書は違う。わり算の性質と過程を知ることで、「わかった」を体感し、数学の面白さを感じることができた。板橋氏は「なぜだろう?」と疑問を持つことを、「正しくつまずく」ことと呼び、学びの過程上でとても大切なことだと言う。「なぜだろう」という疑問が解決したとき、どのような感情になるだろうか。「なるほど」と、すっきりしたような、面白いような気持ちになるはずだ。この「なるほど」こそ、板橋氏が本書で伝えようとしていることである。
本書では「マイナスの計算」「文章題」「因数分解」なども、実生活と結びつけながら分かりやすく解説している。数学ギライが多いであろう女子のみなさん。「因数分解」と「料理」には、共通点があることをご存じだろうか。料理は、あらゆる食材と調味料を、「煮る」「焼く」などの様々な加工を加えることよって、できあがっていく。この食材と調味料と加工を表した「レシピ」を「因数分解」ととらえることで、作業の効率をアップしたり、新しいアイディアを生み出したりすることも可能になるという。数学の考え方を身につけながら、生活を豊かにしていく一石二鳥の方法を、自分のものにしてはいかがだろう。
文=いのうえゆきひろ