フォロワー数約40万人! 日本一有名な男性保育士・てぃ先生が見た、鋭く可愛く奇想天外な園児たち ミカンになるからサヨウナラ? 携帯電話になりたい女の子…?
公開日:2016/12/13
就学前の子どもというのは新しい言葉を覚えたり周囲への興味を強めたりする中で奇想天外な言動を見せ、お父さんやお母さんに刺激的な毎日を与えてくれるものだ。そんな子どもたちが家族と離れて過ごす社会、保育園や幼稚園でどんな会話をしているのだろうと気になっているお父さんやお母さんもいることだろう。かつて自分が過ごした子ども時代を思い返し、あの頃ってどんなことを考えていたのかなとふと疑問に思う大人たちもいるかもしれない。
家庭とは異なる子どもだけの独特な世界が日々繰り広げられている保育園や幼稚園。なかなか普通の大人では見ることができない世界に特別に足を踏み入れ、自然な眼差しでのぞき込める大人がいる。保育士だ。
今回ご紹介する『ハンバーガグー!』(てぃ先生/ベストセラーズ)の著者は東京の保育園に勤める普通の男性保育士、てぃ先生。今、彼のTwitterでの発信が話題となっている。普通の一保育士でありながら、なんと約40万人のフォロワーが存在しているというのだ。本書では、Twitterで紹介し多くの人を魅了したよりすぐりの言動とTwitterでは語り切れなかった当時の話、子どもの行動の切り替え方や叱り方など保育士の経験から語る子どもとのコミュニケーション方法についてのコラムが掲載されている。
本書で紹介されているのはたとえばこんなツイート。
男の子(3歳)が突然「せんせい…ぼく みかんに なっちゃうから…さよなら…」と悲しそうに言う
いたって真剣な様子であったそうだ。また、ある時にはこんなことも。
女の子(3歳)が「おおきくなったら、 けいたいに なりたい!」と言い出した
大人なら考えもしない将来の夢である。
お昼寝前、女の子(4歳)に「プリンセス だから、 せんせいは ことりに なって おこしてね」と言われた
なんて乙女チックなキュートなセリフだろう。
どれも、子どもらしさを感じさせる空想的な発想で本当にかわいい。みかんになると考えたり、プリンセスになってみたり、携帯電話になろうとしてみたり。子どもの想像は思いつくがままで、自由。短絡的で無謀さが果てしない。
…と思った。しかし、てぃ先生とのやり取りを読み進める中で子どもたちの言動の裏には単純ながらも子どもなりの考えの経緯や純真無垢ゆえに存在する奥深さがあることを知らされる。
みかんになるからと先生に別れを告げた男の子は種から木が生えると知り、みかんの種を飲み込んでしまったことがある自分の今後に不安を感じて本気で悩み、こんな発言をしたようだ。なんと愛おしいことだろう。
携帯電話になりたいと言った女の子。てぃ先生が「どうしてなりたいの?」と聞いて返ってきた答えは「ママと ずっと いっしょだから!」。この言葉にいろいろ考えさせられると語るてぃ先生。
プリンセスごっこで先生に小鳥役を頼んだ女の子。約束を守って精一杯の演技で「ぴよぴよ、起きてぴよ」と起こした、てぃ先生は、目覚めた女の子から「なに…? きもちわるい…」という冷静な言葉を受け、地味に悲しみに暮れたという。子どもと思っていたら大人のような冷静さを見せる。思わず笑ってしまうような、こんな行動もまた子どもの奥深さであろう。
一見無意味な子どもの言動も真っ直ぐにその姿を見つめてみると、しっかりとした意味のある想いが潜んでいることもある。子どもの思い付きの発言と思って軽く受け流すと、その貴重な言動を惜しくも見逃してしまうこともあるだろう。
誰もが通り過ぎる子ども時代。きっとあなたも子どもらしい珍言動を繰り返してきたはずだ。子どもと接する中で理解できない、いうことを聞かないというネガティブさもあることを踏まえた上で「ときには『子ども』でありながら『立派な人間』なんだと尊敬を覚えること」さえあるという、てぃ先生。子どもの奥深い魅力と、そんな子どもによって日々驚きと発見の貴重な時間を得ることができる保育士という仕事を素敵だと語る、てぃ先生の子どもへの温かな眼差しは本書を読んでいて心地よく感じることだろう。
もし、毎日の忙しさに紛れて子どもたちの行動を楽しめなくなってしまっていたら、ぜひ本書を読み、あらためて子どもと同じ視点に立って物を見る原点の眼差しを思い出してほしい。人はこうやって誰しも大人になっていくものなのだと考えながら、本書で紹介される子どもたちに癒され、笑わされ、ちょっとホロリとしながら明日への元気をもらっていただきたいのである。
文=Chika Samon