“医師に嫌われる医師”だからこそ書けた目からウロコのアドバイスと情報が満載。医者任せの時代はもう終わった!?

健康

公開日:2016/12/15

『不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である(講談社現代新書)』(富家孝/講談社)

 「国民皆保険制度」の日本。こういう制度はどことなく、国や医療機関はつねに国民の味方であり、もし病気になっても黙って医師に任せておけば「最適の治療」を「適正な出費」の範囲で受けられる、といった幻想を抱かせるものだ。そんな夢見がちなあなたに〈医者任せの時代はもう終わった、覚醒せよ!〉とばかりに、喝を入れてくれるのが、『不要なクスリ 無用な手術 医療費の8割は無駄である(講談社現代新書)』(富家孝/講談社)だ。

 本書によれば、国は現在、医療保険負担の軽減(つまり国民の負担増)策を練るのに必死で、医療機関は患者メリットよりも、自分たちの利益を優先させなければいけない大人の事情があるという。つまり、適正な医療・クスリ・出費、そして健康体と明るい老後を得たいのなら、国(制度)や医者に任せきりにせず、医療にまつわる様々なカラクリや費用などの現実を知り、それに対処する知恵と情報を身につけて自衛するしかない、という。

医療をビジネスの観点から見ると、“リピーター商売”と言えます。なぜなら、顧客を一回きりで返してしまったら、ビジネスとして成り立たないからです。

 冒頭でこうキリッと明記する著者の富家孝(ふけ・たかし)氏は、かつては自身の医院を経営していた医師である。しかしリピーター商売の才覚なく廃院させて以来、医療ジャーナリスト・コンサルタントという立場で、人々が一日でも健康寿命を延ばすためのアドバイス活動を行っているという。本書は、そんな“医師に嫌われる医師”だからこそ明かせた、健康で長生きするための医療版処世術の書なのである。病気になってしまった際、多くの人が悩むのはまず「病院・医者選び」だろう。最近ではその評判を知ろうとネット検索する人も多いのだが、著者は患者を装ったサクラも多いため「ネットの書き込みはあてにならない」と注意を促す。むしろ気になった病院に出向き、職員や看護師の仕事ぶりがテキパキしているか、を確認する方がよほど判断材料になるそうだ。

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また、「診療科目」をやたらと多く掲げる病院も要注意だと著者は記す。そうした場合、経営のために患者数を増やしたいだけ、という目的も潜んでいるという。

こうした病院では、専門外の医者に平気で患者の診療をさせています。ですから患者さんは診療を受けたら必ず、その医者の専門がなんなのかを聞き出すべきです。遠慮をしていてはいけません。

 他にもCTやMRIなど高額なうえに被爆のリスクのある検査を「念のため」と勧めてくる医師にも用心が必要だという。

 本書の特徴は、このように医師・病院選びから始まり、老後の終の棲家づくりに至るまでの幅広い医療情報が網羅されていること。そして生涯において、いったいいくらの医療費が必要となり、それらを軽減させる方法も様々なデータの提示によりわかりやすく教えてくれること。さらには、不要な診療を自ら切り捨てる「勇気」をもつことを指南してくれることも、本書の大きな特徴だ。その分、少々ショッキングなこんなアドバイスも記されている。

(前略)75歳以上でがんが発見されたら、なるべく医者の言うことは聞かないようにすべきです。

 病気には大きく、医者が治せる病気/医者も治せない病気/医者にかかるとさらに悪化する病気、の3つがあると著者は記す。そして後期高齢者(75歳以上)のがんは、このうちの2番目と3番目にあたるのだそうだ。

 本書では、特に「がん」に関しては2章分にわたり、各がん検診のメリット・デメリットから、部位別・年齢別の治療選択アドバイスまで、詳細な情報が入手できる。また、著者自身の治療体験も交えた、「糖尿病」「高血圧」などの生活習慣病に関する章においても、「生活習慣病は病気ではなく“老化現象”」という著者ならではの、目からウロコのアドバイスが満載だ。

「いまは健康だから気にしない」などと思うなかれ、である。自分のためにも、そして親や家族のためにも、ぜひ、本書で医療にまつわる“リアルな現実と対処する知恵”を学んでみてほしい。

文=町田光