インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎…感染症予防できてる? 子どもと一緒に読みたい、感染症のことがよく分かる『感染症キャラクター図鑑』
公開日:2016/12/15
風邪薬のCMを目にすると、ああ、冬が来るんだなと感じます。これからの時期といえば、風邪やインフルエンザの流行も気になるところ。こうした感染症への対策、皆さんはきちんとできていますか? そもそも感染症って、どうやって予防するのが正しいのでしょうか?
『気になるあの病気から自分を守る! 感染症キャラクター図鑑』(岡田晴恵:監修/日本図書センター)は、身近な感染症の原因となる病原体を、その形状や病名、症状などをもとにキャラクター化し、対策や予防法を紹介してくれるイラストブックです。例えば、この冬も流行が懸念されている、マイコプラズマ肺炎。この原因となるのはその名も「肺炎マイコプラズマ」という細菌なのですが、発症するとコンコンという乾いた咳が出ることから、本書では、キツネのお面を被った恰好で描かれています。また、コレラを引き起こす「コレラ菌」のキャラクターは、トラやオオカミ、それからタヌキが混じり合ったような着ぐるみ姿。命をも奪いかねないその危険性に対してあまりにもファンシーなルックスですが、これは日本で昔、コレラが「虎狼狸(ころり)」という妖怪の仕業と考えられていたことから来ているようです。そのほかにも、ヴィジュアル系アーティストを思わせる華やかな出で立ちの「マラリア原虫」や、水まんじゅうのようなぷるぷるもちもち感が愛らしい「水痘・帯状疱疹ウイルス」など、ポップで親しみやすい(親しんだらダメなんですけど)病原体が、同書には40以上も登場します。
ちなみに、個人的に気に入っているキャラクターは、「赤痢菌」くんです。発症すると激しい下痢などを引き起こすという赤痢ですが、この赤痢菌くん、トイレットペーパーを大事そうに抱えていて、何とも健気なのです。メインキャラクターとしては扱ってもらえていないのですが、この本をお手に取られた際はどうぞ、赤痢菌くんにもご注目を…!
こうした病原体たちは、各ページで自己紹介をするとともに、自らの弱点、つまり、その感染症の予防法や治療法についても話してくれています。つぶらな瞳のキャラクターたちが、“自分たちはどうしたら苦しむか”を語る姿は、どこか切ないものがあります。しかも病原体によっては、自分のせいで体を壊す人間がいることを、申し訳なく思っているみたいなんですよね…。その上、彼らはそれぞれ口調や語尾が、少しずつ違うんですよ。性分が滲むようなその語り口や容姿に、読んでいてうっかり感情移入しそうになったりして…。シュールと可愛さが入り混じったようなこの独特な雰囲気は、テキストご担当の大井直子氏の柔らかな文章と、イラストご担当であるいとうみつる氏の世界観の、絶妙なコンビネーションによるもの。純粋に、キャラクターデザインの妙に浸るというのも、本書の楽しみ方のひとつでしょう。
本文には少し難しめの言葉も登場しますが、漢字にはすべて振りがながありますので、小学校中学年くらいから読めるでしょうか。体調を崩しやすい冬本番に向けて、ご家庭での学習には勿論のこと、保健室や学級文庫への配架図書としても良さそうです。なお、この『キャラクター図鑑』シリーズは、感染症について取りあげた本書のほか、天文・人体・食品添加物といったテーマでも、既刊が展開されています。テイストが気に入られた方は、そちらの方もぜひどうぞ。
文=神田はるよ