『週刊プレイボーイ』創刊50周年―その歴史の中で読者は何に「熱狂」したか?
公開日:2016/12/16
今「50年前に何をしていたか?」と問われれば、多くの読者は「生まれてなかった」と答えるだろう。かくいう私もそのひとり。やはり半世紀という時間の重みは相当なものだ。だからこそ、それを超えて生き残ったものには価値があり、強烈な存在感が生まれるのである。
男性週刊誌『週刊プレイボーイ』(以下『週プレ』)は1966年10月28日に創刊し、今年をもって50周年を迎えた。1964年に創刊した『平凡パンチ』の対抗誌という位置づけだったが、そのライバル誌も1988年に休刊しており、生き残ることの難しさを思い知らされる。そんな『週プレ』が、メモリアルイヤーを記念して『週刊プレイボーイ創刊50周年記念出版「熱狂」』(集英社)を出版した。
『週プレ』は男性向け週刊誌として創刊。グラビアや話題のニュース、芸能ネタなどを網羅した「総合情報誌」である。現在、表紙を飾るのはアイドルなど女性タレントが多いが、記念本を開いてみると創刊当時は「生物と女性の裸体を組み合わせたイラスト」であった。創刊から2年ほどはこのスタイルだったというから、『週プレ』と聞いてこの表紙を思い出す人は、かなりの年配者だろう。
消長の激しい出版業界で50周年を迎えるということは当然、読者の支持を受け続けてきた証に他ならない。では何がそこまで読み手を惹きつけたのか。それは本書を通読してみるとよく分かる。
300ページを超えるブ厚い内容の中で特に紙幅を占めるのは、ズバリ「グラビア」だ。「グラビア」とは雑誌の巻頭を飾るカラーページで、いわば一番の「売り」の部分。当然ながら読者の注目もそこに集まる。では男性週刊誌において、読者を惹きつけてやまないものとは何か。──そう、「カワイイ女の子」である。
本書では10年ごとに「グラビア ザ ベスト」として、その年代を代表するグラビアクイーンたちを掲載。吉永小百合や榊原郁恵、松本伊代といった日本を代表するスターたちがズラリと顔を揃えている。しかし松本伊代はそのインタビューの中で「週プレさんの撮影はあまり好きじゃなかった」と発言。なんでもセクシーポーズが苦手で、そういうポーズを要求されると「ドキッとした」という。まあ雑誌側からしてみれば、そういう扇情的なグラビアだからこそ売りになるワケで、撮る側と撮られる側の熱い駆け引きが繰り広げられたであろうことは想像に難くない。
無論、グラビアだけが『週プレ』の魅力ではない。自由すぎる尖った「特集記事」も好評を博している。「ロス疑惑」で世間を騒がせた故・三浦和義氏が人生相談をする「アナーキー人生相談」や、タレント・優香が新人の頃に行なった「名付け親」企画では『週プレ』誌上の他、1997年当時は珍しかったインターネット投票も受け付けていた。こうした型にはまらない斬新な企画が、雑誌の独自色として受け入れられたのである。
しかし好調時は100万部を超えていたという発行部数だが、2008年頃は34万部程度。さらに2016年には19万部程度にまで落ち込んでいる。雑誌不況の影響も当然あるだろうが、娯楽の多様化も大きいだろう。すでに「エロければ売れる」時代ではなく、多くの雑誌が休刊を余儀なくされている。では『週プレ』もこのままジリ貧になってしまうのか? もちろんそうとはいいきれない。誌上で過激なヌードを撮り続けた写真家・篠山紀信氏は寄稿の最後に「元気ないんじゃない?」と締めている。文脈的にはヌードページに対してなのだが、それは雑誌全体に対しての意見にも思えるのだ。かつて『週プレ』が作り上げていた、編集者が己の魂をぶつけるような熱い企画を打ち上げていければ、往時の勢いを超えられる可能性はあると、この記念本は感じさせてくれるのである。
文=木谷誠