自己決定できる子にするために…。今の子どもにこそ読ませたい、アドラー心理学

出産・子育て

更新日:2016/12/29

『超訳こども アドラーの言葉』(齋藤孝/KADOKAWA)

「勇気の心理学」として注目を集めるアドラー心理学。“人はいつでも変われる”“どんな人も幸せになれる”というメッセージは、混迷の時代を生きる多くのビジネスパーソンを勇気づけてきた。

 そんな中、「アドラーは大人だけのものではない。むしろ、こどもたちにこそ知ってほしい!」と言うのが、明治大学教授の齋藤孝だ。アドラーの著作を読むと、そのメッセージはとてもシンプルであることがわかる。シンプルな言葉からエッセンスを抽出し、さらにこどもにも読みやすいように「超訳」して解説を付したのが『超訳こども アドラーの言葉』(齋藤孝/KADOKAWA)だ。

原典「教育におけるもっとも大きな問題は、子どもの限界ではなく、子どもが自分に限界があると考えることによって引き起こされる」

超訳「『自分には限界がある』と思うと、成長できない!」

 人にもともと限界があるのではなく、「限界がある」と思ってしまう気持ちが限界を作り出す。つまり、限界を作っているのは自分自身。限界を決めず、「まだまだがんばれる!」と思うことで成長できるのだ。

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原典「重要なことは何を遺伝したかということではなく、幼い頃に遺伝として与えられたものをどう使うかということである。」

超訳「親からどんな特徴をうけついだかよりも、その特徴を使いこなす方が大事!」

 背が低いからとか、体が弱いからとか、遺伝的な要素を「できない理由」にして逃げてはいけない。背が低くても、体が弱くても、活躍しているスポーツ選手はいくらでもいる。遺伝を使いこなすことができれば、長所にもなるのだ。

『超訳こども アドラーの言葉』の目的は、「自分で決められる人になる」こと。アドラーは、自己決定の大切さを繰り返し述べている。前回失敗したからといって、また今回も失敗するとは限らない。どんな行動や方法を取るかは、その都度自分の意思で決定するものなのだ。だから、幸せになりたいのに幸せになれていないのであれば、選びとる行動や方法を、「幸せになるように」変えればいい。誰かがこうしたからする、誰かに言われたからするのではなく、自分で決める。周りの言葉や情報に振り回されない大人になるためには、子どものころからアドラーの教えをしっかり身につけて「自分で決められる人になる」ことが大切なのだ。

 子ども向けとはいえ、いまいちアドラーを理解しきれていない大人が読んでも十分な内容になっている。子どもと一緒に読むのもよし、「今さら『アドラーって何?』と聞けない」迷える大人たちにも有効だ。

 自己決定できる子どもは、人生の大きな課題にも立ち向かう自信と勇気が持てる。アドラーは、「勇気! 自信! リラックス! この3つがあれば、どんなことも乗りこえられる!」(超訳)と言っている。親がこどもにしてあげられることは「勇気づけ」。この本は、こどもたちにゆるぎない勇気と自信を与えてくれる。