意外とどうにかなるからすごい! ニートが突然、フランスで漫画家生活を始めたら…
公開日:2017/1/3
何か打破したい物事がある時、突然、自分でも驚くような決断力を発揮することがある。筆者も今こうして東京で書く仕事をしているのは、過去の自分の暴走ともいえる決断がきっかけだった。コミックエッセイ『フランスはとにっき 海外に住むって決めたら漫画家デビュー』(藤田里奈/徳間書店)の著者も、思い付きで行動するタイプの人間の1人。
就活も婚活もうまくいかず、ニート生活を送っていた著者・藤田里奈は、「全部忘れて海外とか行きたい」とある日突然フランス行きを決める。そして片付け中に発見した、昔描いた漫画のネタをせっかくだからと描き上げ、イベントに持ち込む。結果、フランス行き直前に連載が決定。こうして、フランスでの漫画家生活がスタートしたのだ。
しかしフランスでの生活は、なかなか順調とはいかなかったようだ。まず、言葉が通じない。フランスに行くと決めてからフランス語の勉強はしていた著者だが、やはり現地の会話は聞き取りづらく、言葉の壁には苦労したとのこと。ルームメイトとなった関西弁の学生・チナツに助けられながら、少しずつフランスでの生活の仕方を覚えていく。
そしてやはり、文化の違いは大きかったようだ。スマホ片手に歩いていたらひったくられたり、バレエを観に行ったら自分の席に知らないおじさんが座っていて、しかもどいてくれなかったり、とにかく日本ではなかなか起こらないようなことが日常的に起こるのだとか。他にも、肉が塊でしか売られていなかったり、キャベツがやたらと固かったりと、自炊するにも一苦労。しかし、体調が悪いと電車やバスで当たり前のように席を譲ってもらえたり、パンがものすごく美味しかったりと、フランスへ行ったからこそ味わえた感動もあったようだ。
本書を読んでいて思うのは、「人間、意外とどうにかなる」ということ。始める前は不安だったり、「私には無理!」なんて尻込みしてしまうこともあるが、一歩踏み出してしまえばもうどうにかするしかないし、どうにかしなきゃと思うもの。先のことを考えて行動するのも大事だが、たまには思い切って飛び込むことも大切なのだ。頑張っても無理そうだったら、道を変えるのもいいし、たまには誰かを見つけて頼ればいい。大多数の人は見て見ぬふりをするかもしれないし、助けてくれないかもしれない。でも、親切な人も必ず存在するし、そういった人に出会える可能性も思っているより高い。
この本は、そんな思い付きを決断に変えることのメリットや楽しさを、面白おかしく実体験で伝えてくれる本でもある。12月9日には、2冊目の『フランスはとにっき 街には慣れたけどカタコトのまま半年目』(藤田里奈/徳間書店)も刊行された。このエッセイを読んで「こんな生き方をしてる人もいるのか!」と衝撃を受けたら、きっと踏み出す一歩のハードルも下がるはず。たまには自分がわくわくすることにぶつかっていける、そんな生き方をしていきたい。
文=月乃雫