トランプ大統領の誕生まであとわずか―日本の未来はどう変わるのか
公開日:2017/1/16
アメリカの大統領選挙で、ドナルド・J・トランプが勝利を収めて2ヶ月が過ぎたが、今でもあの時の衝撃は忘れられない。世界中で多くの人が「まさか」と思う結果だったのではないだろうか。そして来る1月20日には、遂にトランプ大統領が誕生する。選挙戦中の数々の暴言もさることながら、日本人として気になるのは、やはり日本に対する政策。米軍撤退の可能性やTPPからの離脱など、私たちに大きな影響を及ぼしそうな内容も少なくない。
トランプが正式に大統領となった後、世界がどう変わるのか、様々な憶測が飛び交っているが、実際はどうなるのだろうか。『トランプ後の世界 木村太郎が予言する5つの未来』(木村太郎/ゴマブックス)では、トランプが国民の支持を得た理由を様々な角度から分析し、トランプ大統領誕生後に世界や日本がどう変わるのかを予測している。著者はテレビ番組のコメンテーターとしてもお馴染みの木村太郎氏。難しそうなテーマではあるが、噛み砕いて分かりやすく説明してくれている。
■日米安保体制の変化で交渉の難易度が上がる
ビジネスマンとして名を馳せてきたトランプ。政治経験はない。そのため、外交関係での交渉も、今までのようにはいかないだろうと木村氏は指摘する。さらに、これまでの貿易交渉の背後には、安保条約があったため、日米安保体制が変われば、貿易交渉も難しくなる可能性があるとのことだ。関税率なども、その交渉で決められてきたため、これが変われば消費者である私たちの生活にも影響を及ぼすかもしれない。さらに、本書では、日米安保条約を継続する場合には、貿易と防衛の両方で難しい交渉をすることになると指摘。大きな成功を収めてきたビジネスマンであるトランプ大統領に対して、日本がどのような交渉をしていくのかは気になるところだ。
■在日米軍の撤退は現実になるのか?
「在日米軍の撤退」は、トランプが選挙戦中に言及していたことのひとつだが、実際にはどうなのだろうか。筆者も、選挙戦中にワイドショーなどで、「米軍が日本から撤退した場合に、自分たちで防衛する場合の費用がどのくらいになるのか」などを専門家が議論しているのを見ていた時には、「さすがに、それはないだろう」と思っていた。はっきりとした根拠があったわけではないが、多くの人がそうであったように、現実感がなかったのだ。
しかし、著者は、その可能性を肯定している。トランプは「アメリカ第一」を掲げており、「各国がそれぞれの安全保障を考えるべき」と主張してきた。日米の安全保障についても見直しが必要であると言及していることを考えると、在日米軍撤退の可能性を安易に否定すべきではないだろう。
■トランプ大統領は世界を変える
本書で木村氏が繰り返し述べていること。それは、「トランプが大統領に就任すると、あらゆるものが大きく変わる」ということだ。そして、トランプが大統領になった際には、選挙戦中の過激な発言や主張を和らげて、最終的には大きな変化にはならないだろうといった希望的観測を持つことの危険も示唆している。実際のところは誰にも分からないわけだが、足をすくわれないためにも、あらゆる可能性を視野に入れて、今後の対応を検討することを、木村氏は推奨している。
トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に就任するまで、あとわずか。私たちは、この後、どんな変化を目撃するのだろうか。
文=松澤友子