殺処分寸前のトイプードルが立派な警察犬に! 話題沸騰、茨城県のかわいすぎる警察犬・アンズの強さに感動必至!
公開日:2017/1/14
茨城県に、“かわいすぎる”と有名な1匹の警察犬がいるのをご存じだろうか。一般的に警察犬と聞いてイメージしやすいのは、シェパードやドーベルマン、ゴールデンレトリバーなどの大型犬。だが話題の警察犬は、なんとトイプードルなのだ。その名はアンズ。殺処分寸前だった彼女が、小型警察犬として立派に育つまでを描いたノンフィクション『警察犬になったアンズ 命を救われたトイプードルの物語』(鈴木博房/岩崎書店)がこのたび刊行された。
2013年3月、アンズは茨城県の動物指導センターに持ち込まれた。指導と聞けばやわらかいが、その業務は行き場を失くした動物たちの殺処分だ。だからといって職員たちに情がないわけじゃない。むしろそばでその生死を見届けているぶん、誰よりも動物たちへの情がある。持ち込まれた犬をすぐに受け取ることなど到底できず、引き取り先を探したか、打てる手はないのか、アンズの飼い主にも当然聞いた。けれど飼い主は「もういりません」の一点張り。飼い主である自分がいらないと言っているのだからどうしようと勝手だろう、と。
ぷるぷる震えるアンズを見て、著者の鈴木さんは思わず手を挙げていた。「だったらその犬、譲ってください」と。10頭のシェパードを警察犬に育て上げ、30年も活躍し続けたベテラン警察犬指導士に出会えたことが、アンズの運命を大きく変えることになる。
もちろん鈴木さんとて、最初からアンズを警察犬にしようと思っていたわけじゃない。一般的に、警察犬に適しているといわれる服従心の強い犬種のなかに、トイプードルは含まれていない。だが、鈴木さんの家で自分を受け入れてくれたシェパードたちの訓練を眺めていたアンズは、みずからそわそわ意思表示をしはじめる。自分も同じように訓練をしたい。なにかをがんばって、ほめられたい。それは、虐待の傷を克服しかけていたアンズが、はじめて見せた自発の意志だった。
訓練は簡単なことじゃない。警察に所属して働くことの厳しさ、責務の重さは人間も犬も同じだ。だがアンズは決してへこたれなかった。コツコツと訓練を重ねて、警察嘱託犬として認められるまでに成長していく。その過程を鈴木さんの優しい愛情深いまなざしで綴られている本書は、児童書という体裁をとってはいるものの、老若男女の枠を超えて読んでほしい一冊だ。
身勝手な飼い主の言い分、虐待を受けていたアンズの怯え、そしてはじめて触れた愛情に包まれながら癒されていくアンズの成長。自立への道。元来の犬好きで、犬と生活した経験のある方にはおそらく涙なしでは読めないだろう。だが、ふだんいわゆる“動物モノ”には興味ないと、敬遠しがちな人にもぜひ手に取ってほしい。傷ついた心を癒し、恐怖を乗り越えながら、支配されていた生活から自分の求める道へと一歩踏み出すその姿は、きっと、犬も人間も変わらないはずだから。
かわいすぎる警察犬、だが同時に、とても凛々しく、しなやかな強さを持った警察犬。人々を助けるだけでなく、その生きざまで人々に勇気を与える。それが、アンズなのだ。
文=立花もも