子どもが本嫌いになる親のNGワードとは!? 読書で人生を力強く生きていく子にするための「10の秘訣」
更新日:2017/1/23
想像力、思考力、集中力が高まり、感性が磨かれる読書体験で、我が子の脳と心が豊かに育ってほしいと願う親は多い。しかし漫画やアニメ、ゲーム、ネットといった娯楽が溢れる今の時代、本を読まない子どもにうっかりNGワードを言っている親は多いのではないだろうか?
「もう小学生なんだから絵本は卒業ね」「読み終わったら感想を聞かせて」「きちんと最後まで読みなさい」「またその本なの? ほかのも読んだら?」
このように読書を「何らかの学習の手段=教具として考えている」発言は子どもを本嫌いにさせる原因のひとつだと断言するのは、花まる学習会の平沼純さんだ。
長年、教育現場で子どもたちの成長を見続けてきた平沼さんは著書『子どもを本好きにする10の秘訣』のなかでこう続ける。「生まれつき本が嫌いな子どもなどひとりもいない」と。子どもが本嫌いになるのは、そうなってしまう周りの環境や大人からの働きかけのせいなのである。
では子どもが本を心から楽しいと思えるようになるにはどんな環境や言葉がけが必要なのか? 本の選び方や読み聞かせで親が気をつけるべきことは何なのか? 本書ではそうした読書に関するさまざまな疑問に対し、平沼さん自身が教育現場で見出した実感や知見をもとに答えている。
たとえば「読書は何かの『手段』ではなく、それ自体が『目的』」。読書はあくまで“楽しい”ものであってはじめて結果的に学びにつながることが多い。本を読み終わったあと感想を聞く必要もまったくなし。「優れた本こそ奥深くて要約できない」という言葉にハッとさせられる本好きの親もいるだろう。「泣ける本」や「感動する本」を子どもに押しつけるとたちまち道徳的義務と化して子どもは本から遠ざかる。子どもたちに必要なのは「感傷」ではなく「感受性」なのである。
あるいは、友だちと遊ばずに本ばかり読む子になったら寂しそう……と心配する親がいたら「孤独とは決してネガティブなものばかりではなく、人の内面の成長を促すものでもある」ことを知ってほしい。時間を忘れて本の世界に没入する豊かで幸福な体験こそ、自分の人生を力強く生きていく糧になるからだ。子ども時代に本好きだった人ならわかるだろう。大人になった自分が幾度となく子ども時代に読んだ本に支えられていることを。
タイトルにもある「子どもを本好きにする10の秘訣」は今すぐ実践できることばかり。毎日、テレビやラジオを消した静かな時間をつくる。自然な声音で読み聞かせして子どもと一緒に物語世界に浸る。子どもの選択を尊重する。家族で図書館や本屋に行く。感想を無理矢理聞き出さない。まずは大人自身が読書を楽しむ……。どれもそう難しいことではないはずだ。
さらに本書には平沼さん厳選の8分野291冊のブックリストもレビュー付きで掲載されている。
最後に「自分だけの物語を」の章から一部引用したい。
この世界を、もうどうしようもなくなっているのに、やはり肯定したい気持ちにさせられる。あきらめと希望が同居し、明るさと悲しみが一緒くたなのに、私は明日のことを考えている
これは音楽家・武満徹の言葉で、平沼さんがドイツのミヒャエル・エンデのお墓を訪れ涙したとき脳裏に浮かんだとして、こう綴っている。
人生最後の瞬間に、それまでに経験してきたいいことも悪いことも、すべてを『よきこと』として受け入れ、笑顔でいられるかどうか。最終的には自分が歩んできた道を、すべて受け入れて肯定できるかどうか——。」「人は誰しも自分の人生という物語をつくって生きています。」「一人ひとりの子どもたちがこの世界の至ところに眠っている豊かな物語に触れることをとおして、今度は自分自身の物語を力強く作っていけることを願ってやみません
文=樺山美夏