日々の仕事に打ち込むだけでは、昇進できない。管理職に選ばれる人は「ここ」が評価されている!!
更新日:2017/3/6
昨今の企業において、年功序列で昇進・昇給する時代は既に終わりを告げている。今は実力主義の社会だ。だが、実力があるからといって、管理職になれるとは限らないというのも現実。「日々の仕事に打ち込むだけでは昇進は難しい」。その事実をいち早く受け入れ、昇進を決定する上層部が「本当に評価をしていること」を適確に理解することが、あなたを「管理職」へと導く。
『上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣』(中尾ゆうすけ/すばる舎)は、長年人事にかかわり、人材採用や人材開発のスペシャリストとして活躍している著者のビジネス書だ。
一般社員を管理職に抜擢する側の上層部が、「何を見て人を引き上げているのか?」「彼らの視界に『任せられる人物』として映るには何をすればいいのか?」、その内部事情を長年の経験と実績から大公開している。
大前提は「組織のなかで自分の存在を認知させ、人より多くのチャンスをつかむためには、成果プラスアルファのアピールも、時には必要になる」ということ。「実績があれば、昇進できるんじゃないの?」と思っていた方、必見だ。
本書は「上に行く」人と「ここまで」の人の「差がつくポイント」を紹介している。
その一つが「上に行く人は、全体の成果に貢献している」「ここまでの人は、自分一人の成果に集中する」というもの。
個々の社員が「自分の目標を達成する」のはもちろん重要なことだが、自分一人の目標が達成できたからといって、会社の目指す総体としての「目標」に到達しているわけではない。よって、上に行く人は「常に課の数字、部の数字、そして会社の数字まで視野を広げ、自分がなすべきことを考える」。そのため、自分一人が目標を達成できたことで満足するのではなく、他の社員のことも考え、組織全体に目を配り、貢献しようとしなければならないのだ。
抜群に能力のある100点の人より、たとえ実務能力が70点でも、組織への貢献度が高い人の方が評価されやすい。上の地位になればなるほど、他者のマネジメント、新たな業務の開拓、組織内の課題の洗い出しなど「実務以外」の仕事を行うことが増えていく。管理職に就く人には、将来的にそういった職務を任せることになるわけだから、「成果」ではなく「会社への貢献度」で判断されるのも納得できる。
差がつくポイントをもう一つ。
上に行く人が「力不足を認めて頭を下げる」のに対し、「ここまで」の人は「行動しないことで保身を図る」という。成果の出し方も重要だが、周囲は「成果が出なかったときの対応」もしっかり見ているとか。
自分のミスを責任転嫁するような人は論外として、失敗を恐れて行動しない人も、低い評価に留まってしまう。自己成長の観点から見ると、「文句を言われないことを基準に仕事をしていると、どうしても経験の幅が狭くなる」。よって、管理職を進んで任せられる人材とは言い難くなってしまうのだ。
また、自己中心的なやり方が見抜かれており、自分が知らない内に「管理職候補」から外されている可能性がある。例えば、
「批評家となり、他人の仕事に口を出すが、自分では動かない」
「仕事の基準を『これくらいでいいだろう』と自己判断し、中途半端で終わる」
「その日のモチベーションによって、仕事に取り組む態度にムラがある」
「自分がすべき仕事と、面倒でやりたくない仕事を勝手に決める」
……心当たりのある方は、すぐさま改善した方がいいかもしれない。
そのほか、「評価につながりやすいのは、じつは『弱み』のほう」や、「飲み会の幹事をやるとマネジメントの力量がわかる」など、思いも寄らなかった「上層部の視点」を浮き彫りにしてくれている本書。
ビジネスマンとしての悩み(例えば、上司があまり有能でない場合はどうするか?)の対処法も載っているので、「上に行きたい」気持ちが少しでもあるのなら、読んで損はない一冊だろう。
文=雨野裾