ジムで筋トレは効果なし? 日本人の体質に合わない「3つの健康法」とは?
更新日:2017/2/13
これまで数多くの欧米発のエクササイズ、ダイエットや健康法などが日本に上陸してきた。しかし実際にそれらを試してみても、「あれ、なんか違うかも?」と、効果を実感できなかったという人も多いのではないだろうか。そのワケはどうやら、欧米人と日本人の「体質の違い」にあるようだ。
そのことを科学的根拠に基づいて教えてくれるのが、本書『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣予防(ブルーバックス)』(奥田昌子/講談社)だ。日本人の健康維持や病気予防には、しっかりと「日本人体質」に合った方法を選ぶことが大切なのだという。
内科医で長年、予防医学に取り組んできたという奥田晶子氏による本書は、こんなクイズから始まる。以下の3つの中には間違った(日本人の体質には合わない)健康法があるというのだが、お分かりになるだろうか?
(1)骨を強くするために牛乳や乳製品をつとめて摂取している
(2)筋肉をつけて基礎代謝を上げるため、ジムに通い始めた
(3)糖尿病予防やダイエットのために炭水化物(糖質)をひかえている
さて正解だが、驚くなかれ。これら3つはすべて、日本人の体質には不向きな健康法なのだそう。中でも(3)を実践している人は多いだろう。しかし著者によれば、「糖尿病予防のためにも、日本人は総カロリーの50~60%を炭水化物から摂る必要がある体質」だと指摘する。
というのも、日本人は欧米人に比べてインスリンというホルモンの分泌量が少ない体質のため、炭水化物の摂取によりその不足を補い、エネルギー源となるブドウ糖を得て健康を維持しているのだという。つまり、日本人が白米(炭水化物)を主食にしている背景には、日本人体質を考えた先祖代々からの知恵が、しっかりと活かされているというわけだ。
このように本書は、先祖代々から受け継ぐ「遺伝的素因」と、日本古来の風土という「環境要因」によって作り出された「日本人体質」にとって、正しい健康管理・病気予防の知識を授けてくれるのだ。健康アドバイス本は数多いが、本書のように「日本人体質」を切り口にした本は皆無に近い。そのため、読み進めると「あ、そういうことだったのか」と、まるで長年の疑問が解けたかのように納得できる、まさに目からウロコの指摘やアドバイスが随所にちりばめられていることに気づくだろう。
また本書では、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症と動脈硬化」「がん予防」「胃がん」「大腸がん」「乳がん」など、病理別に日本人体質にあった予防法も解説されている。ちなみに「乳がん」の章では、アジア人女性を乳がんから守ってきた伝統食・栄養素として大豆と大豆からのみ摂取できる「イソフラボン」の効果が詳述されているので、気になる方はぜひ、チェックしてほしい。
さらに日本人の健康を阻害する主要因として本書で指摘されているが、食の「欧米化(=肉・脂中心の食)」の問題だ。近年話題になった欧米発のワイン健康法も同様に、日本人にとってはワナがあるという。というのも、日本人はアルコールに弱い体質(=健康に悪影響を与えやすい体質)なのだそうだ。そのため本書には、飲酒による健康被害の深刻さも様々に指摘されており、お酒好きには少し耳が痛いかもしれない。しかし、日本人に生まれた以上、ここはしっかりと向き合わなければいけないところだろう。
ごはん、大豆、野菜、魚などが並ぶ典型的な和食膳には、代々の日本人が模索してきた「日本人体質にあった健康の知恵」が凝縮していることをも改めて教えてくれる本書。日々の健康管理と食生活を再考する指南書として、ぜひとも読みたい一冊だ。
文=町田光