物が減ると幸せが増える! フランス人が追求する「とりあえず買う」のではなく「選び抜く」メリットとは?
更新日:2017/1/23
2017年は汚部屋を脱出しようと年末に大掃除をしたはずなのに、気がつけば部屋の中が物であふれかえっている……心に誓った新年の抱負に、わずか1ヶ月でギブアップした人にこそ読んでもらいたいのが『シンプルに生きる 人生の本物の安らぎを味わう(講談社プラスα文庫)』(ドミニック・ローホー:著、原 秋子:訳/講談社)だ。
フランスと日本を行き来して30年以上になる著者によると、日常生活で「シンプルな生き方」を追求することが人生を豊かにし、本物の安らぎや心の充実にもつながるという。世界で150万部以上のベストセラーとなった本作を文庫化した本書は、いつでも手に取りやすいコンパクトサイズになっても、自分にとって大切なものとは何かを、私たちにやさしく語りかけてくれている一冊だ。
なぜ、著者はシンプルな生き方の追求にたどりついたのか。禅の修行や墨絵の習得で、日本の精神文化にすっかり魅了された著者は、シンプルとは「美しいもの」と「適切で便利なもの」とが一致したもので、それ以外の余計なものがない状態と考えるようになる。やがてシンプルを追求した生き方をしていくことで、暮らし全体の風通しがよくなり、さらには物の本質や真髄まで見極められるようになることに気づくようになった。
また、私たちの感動を入れる器が物だからこそ、物を購入するときは「とりあえず」という妥協で選ぶのではなく、選び抜いたものを購入すること。著者はワードローブの中にある洋服やバッグだけではなく、人間関係までもスッキリと整理をして、本当の友達と過ごす時間を増やすことを推奨している。
すぐにはマネできないと考えがちだが、本書には、シンプルに生きるための具体的なアドバイスが満載だ。例えば、「物が減ると幸せが増す」の章では、物を手放すとありのままの自分がわかるからこそ、使い捨てのナイフやフォークをやめて、物を吟味する時間を持つことが大切だという。確かに、一つ一つの物が自分の人生にどれだけの価値をもたらしているのかを考えるようになると、物をたくさん所有することに意味はないだろう。
また「お金を甘やかさない使い方」の章では、お金を失うのはだらしなさの代償だからこそ、価値のないものにお金を浪費するのをやめるようアドバイスがある。例えば、余計なものが詰め込まれている家にかける保険料をやめ、豊かに生きるための旅行や読書にお金を費やすことを推奨している。
それでも、物を捨てる勇気のない人には、「捨てる判断がつかないことは生き方に通じる」と断言。過去や思い出にこだわっていると、今という時も見逃し、将来を予測することもできなくなるという。こうした生き方の積み重ねが、帯の「ものやこころの重荷はさっぱり捨てて、今という時を十分に堪能して生きる。これが幸せに生きる秘訣」につながるのであろう。
掃除本や片付け本のハウツーも大切だが、本書は禅の修行のように、物のあり方を通して、自らの人生を見つめ直すような読後感になる。読み進めるうちに、誰もがミニマルな生き方を目指したくなるに違いない。
文=富田チヤコ