そうだったのか!池上彰と佐藤優が教える ニュースから世界を読み解く「最強の読み方」
公開日:2017/1/27
日々変わり続ける国際情勢や世界経済。日本や海外の各地で起こっている様々な事件や騒動。世の中に溢れ出し、氾濫する情報をいかに読み解けばいいのか。
『僕らが毎日やっている最強の読み方 新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』(池上彰、佐藤優/東洋経済新報社)では、国際ジャーナリストとしてテレビのニュース解説でお馴染みの池上彰氏と、元外交官であり作家として多数の著書を執筆している佐藤優氏が毎日実践している新聞、雑誌、ネット、書籍の読み方の極意を伝授している。
情報の最前線にいる両氏にとって、新聞はなくてはならないもの。全国紙と地方紙、海外紙あわせて池上氏は毎日11紙、佐藤氏は10紙もの新聞を定期購読して読んでいるという。ネットが普及した現代でも、未だに「一覧性」において新聞に勝るものはなく、一面から読んでいけば、政治、経済、文化やスポーツを含めた世の中の動きを知ることができる。ニュースサイトやSNS、ブログなどの記事も一次情報は新聞というケースが多いのだ。
しかし、両氏はそれが仕事であるから膨大な数の新聞を読んでいるのであって、多忙なビジネスパーソンが同じ真似をする必要はないという。では、我々のような一般人はどのように新聞を読めばいいのか。
まず新聞やニュースを読む前に、土台となる基礎知識が必要不可欠と述べている。国際情勢を理解するにも歴史や宗教についての前提知識がなくては物事の本質を理解できない。これらの基礎知識は、高校の「日本史A」「世界史A」の教科書・参考書から学び直すのがよいという。
そして新聞は「最低2紙に目を通す」が絶対条件だ。ニュースの取り上げ方も新聞ごとに違っていて、1紙だけ読んでいては偏向した報道の情報バイアスに気づかなくなる危険を訴えている。
例えば、現在の『産経新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』は安倍政権に好意的で、反対に『朝日新聞』『毎日新聞』『東京新聞』は安倍政権に対立的な論調が鮮明になっている。
また「『朝日新聞』は国会議員やエリート層の読者が多い」、「『読売新聞』は海外記事と生活面が充実している」、「『毎日新聞』は個々の記者の力が強く自由な雰囲気」など、新聞ごとの個性や特色もある。
2紙を選ぶときは、最初にいくつかの新聞を読んでみて自分に合っている1紙を定期購読し、もう1紙は定期的に切り替えて駅売りやコンビニで購入するスタイルを推奨している。「1紙は保守系、もう1紙はリベラル系」というように論調の異なる新聞を読み比べることで報道の客観性を保つのだ。
さらに記事ごとの読み方については、「読み飛ばし」が基本だ。朝刊の文字数は約20万字といわれていて、書籍に換算すれば新書2冊分にもなる。すべての記事を一言一句読むのは時間的にも現実的でない。自分にとって重要ではない記事はあえて読まない技法が大切になる。新聞の「見出し」と「リード」に目を通すだけで何が書かれているかはつかめる。「見出し」を一読した後、気になった記事だけを読み返せばよいのだ。2~3紙なら10分程度で「見出し」を読み、記事の精読は1時間以内に収めるのが理想だという。
新聞を読むことは「手段」であって「目的」ではない。新聞でニュースの全体像を捉え、さらに気になったテーマがあれば書籍で深掘りするというのが両氏の共通した新聞の読み方だ。
本書は、このような新聞の読み方に加え、さらに雑誌、ネット、書籍の読み方について、様々な技法を誰でもすぐに実践できる簡単な方法に換えて解説している。
質の高い情報を求めるビジネスパーソンだけでなく、これから就職活動に勤しむ学生の心得として、あるいはネットのデマに踊らされないための防衛手段としても役に立ち、ニュースや情報との付き合い方を考えさせられる。いまから明日の新聞を読むのが楽しくなってきた。
文=愛咲優詩