【松坂桃李インタビュー】「周りの共演者の協力なしでは旅人を演じられない」愛と復讐の狭間で揺れる“ワケアリ探偵”日暮旅人役への思いに迫る
公開日:2017/1/29
山口幸三郎による、メディアワークス文庫の人気小説『探偵・日暮旅人』シリーズ。主人公は幼少期のある事件をきっかけに、聴覚・嗅覚・味覚・触覚という視覚以外の感覚をすべて失った日暮旅人という青年。そんな彼は4つの感覚と引き換えに手に入れた特殊な能力を活かし、探しもの専門の探偵事務所を営んでいる。実は、失った感覚をカバーするため異常に発達した彼の目には、言葉や感情、においといった見えないものが“視える”のだ。
2015年に『視覚探偵 日暮旅人』としてスペシャルドラマが放送されたものの、その幕引きはとても意味深。いつも穏やかな旅人が、恐ろしいほど冷たい目でこちらをにらみつけるシーンで終わっているのだ。
「旅人はいったい何を隠しているの!?」と、放送直後から多くの人が続編を熱望していた『視覚探偵 日暮旅人』が、2017年1月22日(日)より連続ドラマとして帰ってきた。スペシャルドラマから引き続き演出を手がけるのは、独特の世界観を持つ堤幸彦さん、主演は若手きっての実力派俳優、松坂桃李さんが務める。
旅人の過去と裏の顔がどんどん暴かれていくであろう今回の連続ドラマ。主演の松坂さんは、この複雑な役どころをどのように演じるのか。実際に話を伺ってきた。
◆ほのぼのシーンを丁寧に演じることで、ブラック旅人がより際立つ!
── スペシャルドラマのあの終わり方、すごく意味深でしたね……!連続ドラマでは、日暮旅人の裏の顔がどんどん暴かれていくと思うのですが、普段の穏やかな顔の裏に、大きな闇を抱えているという二面性を演じるのは難しいことではないですか?
松坂桃李(以下、松坂) もちろん、人間誰しも表と裏をもっているものだと思います。僕自身も、つい人の言動に探りを入れてしまうようなところがありますし。でも、旅人の場合は抱えている闇があまりにも深すぎて……。一話ごとのほのぼのとしたストーリーと、全編にわたって描かれる旅人の過去をめぐる復讐劇は、意識的に演じ分けるようにしています。
── たとえば、どのような部分をとくに意識していらっしゃいますか?
松坂 旅人は人の感情が視える分、周りの人の言動と本当の気持ちのズレがあったらそれに気付いてしまうんです。でも、だからこそ目の前の人に対して、誠意を持って一生懸命向き合おうとしている。その表の姿を丁寧に演じることで、裏の顔である“ブラック旅人”のシーンも活きてくるんじゃないかと思っています。
── ブラック旅人……!スペシャルドラマのラストシーンのような、ゾクッとするほど冷たい表情がまた見られるわけですね。
松坂 ちょうど今、5話を撮影しているところなんですが、徐々に“ブラック旅人”の闇がさらに深くなってきていて。相棒の雪路(濱田岳)や娘の灯衣(住田萌乃)、そして陽子先生(多部未華子)といった大切な家族に嘘を吐かなければならないんです。この葛藤は本当に苦しいだろうなと思いながら演じています。
◆松坂「僕、堤幸彦さんにおもちゃにされています(笑)」
── 旅人は、視覚以外の感覚がないけれど人には見えないものが視えるという特殊な設定がありますよね。それを表現するうえで意識していることはありますか?
松坂 唯一の視覚だけでどれだけの情報が得られるのか、旅人はどういう視線で世界を視ているのか、つねに考えながら演じています。ファンタジーな設定だからこそ、どこまでリアリティをもたせることができるかが大切だと思うので。ただ、旅人という役は僕の力だけでなく、周りの共演者の協力があって形作られているんです。たとえば、話しかける前に視界に入り込むとか、手をふって意識を向けさせるとか、そういった周囲の方の演技に助けられています。
── なるほど。松坂さん自身の共演者の方たちとの関係の築き方は、そのまま旅人と周囲の人たちとの関係を写し取っているようですね。
松坂 この仕事って、絶対にひとりでは成立しないんですよ。共演者やスタッフ、そして視聴者のみなさん。いろいろな人が支えてくれるから、僕はこうして旅人を演じることができる。だから、周りの人に対して一生懸命向き合おうとしている部分は、すごく共感できます。
── 撮影現場はどんな雰囲気なんですか?
松坂 灯衣や雪路、陽子先生と一緒のシーンはスペシャルドラマに引き続き、ほのぼのとした雰囲気です。でも、連続ドラマから新たに亀吉(上田竜也)と増子(シシド・カフカ)というパンチのあるふたりが仲間入りして、さらに彩り豊かな現場になりましたね。
── なにか印象に残っているエピソードがあれば教えてください!
松坂 日暮旅人の座組は、雨が降ろうが雪が降ろうがやるんです(笑) 天候に負けない、これは心強い! 第一話で雪が降っているシーンがあるですが、その日たまたま雪が降っていたら、堤さんが「雪降ってる設定にしよう!」と。でもそのおかげで、シーンに深みが増したというか。さすがだなと思いました。
── 松坂さんは堤さんにどんな印象をお持ちですか?
松坂 頭のなかに大きなおもちゃ箱がある人、でしょうか。僕たち俳優もスタッフも、堤さんのおもちゃ箱の中で遊ばれている感じ。でもそのおもちゃにされている感じがすごく心地よくて。そのぶん、常に食らいついていかなければならないですが、それも楽しいんです。
── 最後に『視覚探偵 日暮旅人』の見どころを教えてください!
松坂 「視覚探偵」というタイトルから探偵モノ、ミステリーという印象を持つかもしれませんが、僕はヒューマンドラマだと思って演じています。旅人の周りには、灯衣や雪路、陽子先生をはじめとする、たくさんの人たちの愛が溢れている。でも、壮絶な過去や復讐心、見えないものが視えるというときに残酷な能力のせいで、旅人はいつも葛藤のなかにいます。その人間味を味わってもらえたらと思います。
── ありがとうございました!
◆多くの人の記憶に残るヒューマンドラマになる予感!
物腰柔らかな好青年の顔と、ゾクッとするほど冷たい目をした裏の顔。大きな闇を抱えた日暮旅人という人間を演じることで、松坂桃李さんの新たな魅力が開花するのではないだろうか。松坂さん自身も、原作の『探偵・日暮旅人』を読んで、自分にとって挑戦的な作品になると感じたという。
闇を抱えた主人公が、周囲の人から自分に向けられた愛を“視る”ことでどのように変わっていくのか。原作小説の引き込まれるストーリー展開に、堤幸彦さんならではの世界観、そして松坂桃李さんという魅力的な俳優が掛け合わさって、『視覚探偵 日暮旅人』は、多くの人の心を打つヒューマンドラマになる期待大だ。
取材・文=近藤世菜 写真=内海裕之 スタイリスト=伊藤省吾
■日曜ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』
出演:松坂桃李 多部未華子 濱田岳 木南晴夏 住田萌乃 和田聰宏
/ 上田竜也 シシド・カフカ / 木野花 北大路欣也 ほか
原作:山口幸三郎『探偵・日暮旅人』シリーズ
メディアワークス文庫(KADOKAWA刊)
脚本:福原充則
音楽:グランドファンク
オープニングテーマ:「夢の中へ」井上陽水(ユニバーサル ミュージック)
エンディングテーマ:「この闇を照らす光のむこうに」Anly+スキマスイッチ=(ソニー・ミュージックレコーズ)
演出=堤 幸彦 ほか
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/tabito/