意外と知らない戦国時代の事実。戦国最強の「武田騎馬軍団」にはウソがいっぱい?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『日本人が知らない意外な真相! 戦国時代の舞台裏大全』(歴史の謎研究会/青春出版社)

 昨年の大河ドラマ『真田丸』は平均視聴率も悪くなく、盛況のうちに幕を閉じたようだ。そして今年の『おんな城主直虎』も、舞台は『真田丸』とはやや時代は異なるが「戦国もの」という点では同じである。

 2年連続大河の舞台に選ばれるほど「戦国時代」は、多くの人を魅了している。しかし、意外と知られていない「事実」があるのはご存じだろうか?

『日本人が知らない意外な真相! 戦国時代の舞台裏大全』(歴史の謎研究会/青春出版社)は、戦国時代の基礎知識から、合戦の意外な事実、武将の裏の顔、城をめぐるナゾといったあらゆる「戦国事情」を網羅した決定版である。

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 著者の「歴史の謎研究会」とは、「歴史の闇にはまだまだ未知の事実が隠されたままになっている。その奥深くうずもれたロマンを発掘し、現代に蘇らせることを使命としている研究グループ」だという。なんとも、情熱にあふれた一団ではないか。

 本書は文章と簡単な図説で、戦国時代を分かりやすく説明してくれている。

 戦国時代の発端となった「応仁の乱」から群雄割拠の時代へ突入したところから、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった「有名どころ」の説明もバッチリ。戦国の入門書としては最適の一冊だ。

 そして、すでに「戦国ファン」として多少の知識を持っている方でも、「意外と知らなかった事実」や「最新の研究によって明かされたこと」も載っているので、読みごたえは充分だろう。

 その中でも驚きの事実がこちら!

戦国最強と言われた「武田騎馬軍団」。その戦闘スタイルは架空のものだった!?

 圧倒的な強さを誇ったという甲斐の武田信玄率いる「武田軍団」。その主力とされていたのが、馬に乗り、戦場を駆けた屈強な騎馬軍団。しかし、この騎馬軍団、近年では架空の存在だったという説も出ている。

 なぜなら、「戦国時代の戦闘スタイルは騎乗したままでの突撃ではなく、下馬しての戦闘が一般的だったとされているから」。

 フィクションでは草原を騎馬武者の大軍が駆けているイメージがあるが、実際には大将格の数名だけが馬に乗り、そうでない者は馬を後ろにひかせ、下馬した状態で槍を持ち、戦っていたそうだ。

 これは当時の兵士たちが集団訓練を行っていなかったため、全員が全員馬に乗ってしまうと、指揮官が統率できなかったからとも言われている。また、騎馬で戦うことは並大抵にできることではないので、そこまで「熟練した武士」が多くなかったというのもあるかもしれない。

 さらに、ドラマで観る戦国時代の馬はサラブレッドだが、本来は在来種の馬で体高が低く、時速も20キロ前後というゆっくりペースだったという。体高が低いというのは、つまり四肢が短く、やや不格好。時速60キロで走るスラッと足の長いサラブレッドの姿を競馬中継で観たことがある人も多いと思うが、あのようなかっこいい疾走感は、戦国時代の馬にはなかったのである。

 その他、「合戦前に女性との性交渉禁止」や「敵が攻めてきた時に民衆が逃げ隠れた意外な場所」や「名古屋城の金の鯱をめぐる奇妙な噂と呪いの伝説」など、様々な方向で「戦国時代の舞台裏」を教えてくれる一冊。大河ドラマも、「裏」の視点があれば、もっと面白くなるだろう!

文=雨野裾