JR中央線、東急田園都市線エリアに住むと子どもの学力がアップするってホント? 「成績の悪いエリア」は?
公開日:2017/2/2
『東京23区教育格差』(昼間たかし、鈴木士郎/マイクロマガジン社)は、「子どもを有力大学に入れる」ことをゴールと設定し、23区の教育環境を中心とした特徴をひもといている。
「教育格差」として2つを定義している。1つは、学力のレベルが高い学校や進学塾のある都心部と、少ない地方という「地域格差」。もう1つは、教育内容も授業料も高い私立校と低学力の公立校との「教育費格差」。
東京都学力テストの結果によると、区ごとに学力差が生じており、学力上位グループは、平均年収の高い区(港区、千代田区、渋谷区など)、下位グループは平均年収の低い区(足立区、板橋区、北区など)と、ほぼ一致していた。このことから、子どもの教育格差=親の学歴・収入格差であると著者は考察する。さらに年収の高い区ほど親世代の学歴が高いことも示されている。
「学力というのは一生懸命求めれば、かなり多くの子どもが獲得できる程度のものだ。それでも区ごとにかなりの差が生じているのは、環境という要素によるものだ」と著者は述べる。
「子どもに高レベルの教育を受けさせるには、基本的に高学歴・高収入エリアで子育てをすることが有利である」と著者が語るその理由は、「学習意欲というものは、親がガミガミ言うことより、周りの雰囲気から勉強の必要性を感じ取ることで生まれるもの」ということにある。勉強なんてしてもしょうがない、したくてもできないという経済的な状況もある地域では、学習意欲のある子どもの方が居心地の悪いことさえあるそうだ。人間は話の合う人同士で群れを作る。そのため親世代の学歴差による地域差が生まれ、ここに子どもの成績がリンクしていくということなのだ。
高学歴の親が多い土地=教育環境の良いところといえるが、ではどのあたりが「教育エリア」なのだろうか? たとえばJR中央線や東急田園都市線エリアだそう。逆に「成績の悪いエリア」は、板橋区、足立区、葛飾区ということだ。しかし東京23区で子どもひとり大学まで育て上げると、全部ひっくるめて3000万円程度のお金がかかるため、地価の高い教育エリアに住んでの子育ては簡単なことではない。
では教育費が確保できる、地価が低めで教育に適した地域は? というと、今の狙い目は、なんと教育環境が悪いとされてきた「城東地域」だという。葛飾区や教育不毛地帯といわれた足立区なども、近年の盛んなマンション開発により、今までの住民層とは雰囲気も考え方も違う住民が入ってきたことで、進学塾なども増えているそうだ。
23区それぞれの、さまざまな歴史を経ての地域環境の成り立ちや、公立校のレベル、高レベル校へのアクセスなど、子どもの学力向上を考えるうえで役立つ一冊だ。
文=泉ゆりこ