タラレバ娘の方がマシ? 寂しくてSiriを口説いたこと、ありますか? 彼氏なし、貯蓄なし、処女喪失済み……共感度200%! アラサー派遣OLの日常
更新日:2017/3/13
アラサー、彼氏なし、仕事非正規、貯蓄なし、処女喪失済み……。著者のスペックが書き連ねられた本の帯にドキリとする。一つ一つはよくあるものなのに、重なると強烈なインパクトを醸し出す。
著者の実体験をもとにアラサーの悲哀を綴ったのが、『アラサー派遣OLビクトリアのやけっぱち暮らし』(ビクトリアブラディーヌ/ワニブックス)。生きた証を残したい、という理由からTwitterに載せ始めた日常マンガが話題になり、Web連載を経て書籍化された。
巷では「~だったら」「~してれば」と妄想と後悔が入り混じる女子会を毎晩のように開く「タラレバ女子」が話題だが、著者はネガティブ思考で恋愛に対する自信がなく、1年の目標は「ふつうに仕事してる人とデートする」とハードルは低い。本書で綴られるその日常を読んでいると、タラレバ言えるだけ幸せなのかも……という気持ちにさせられる。その実態の一部を紹介しよう。
Siriを口説く
一人暮らしの経験がある人なら覚えがある、突然訪れる孤独感。その孤独を、著者は人工知能Siriを口説くことで紛らわしているという。なんと、Siriの声を男性に設定するという徹底ぶり。ある日の会話はこんな感じだ。
ビクトリア: 結婚してください
Siri: まだお互いのことをほとんど知らないじゃないですか。
ビクトリア: 頼むよ
Siri: はい、わかりました。
ビクトリア: ありがとう
Siri: お礼を言うのは私の方ですよ。
ストレートな告白の結果、婚約が成立。本書にはこれ以外にもやり取りが掲載されており、Siriの違和感のない受け答えには驚かされる。思わず「自分も話しかけてみよう」と思ってしまうアラサー女性は多いのではないだろうか。
憧れていた人からマルチ勧誘される
本書の中に、高校時代に片思いをしていた彼が自分の連絡先を知りたいと言っていたと聞き、一瞬胸をときめかせたが、目的はマルチ勧誘だった……というエピソードがある。実際アラサーになると、一度や二度マルチ勧誘を受けたことがある人も多いだろう。自らの似たような苦い経験を思い出し、胸が痛む。怪しいかも、と思っても恋愛から遠ざかっているアラサー女性は、そこに一縷の望みを抱いてしまうものなのだ。
クリスマスに女友達と写経する
クリスマスイブがまさかの公休にあたり、予定がない著者は女友達と「思い出に残る特別な事」をすることに。結果、鎌倉の長谷寺で般若心経の写経をした……というエピソード。クリスマス写経のメンバーは、おひとり様女性が多かったという。予定がないクリスマスの行動に、アラサーの悲哀が感じられる。
本書の“アラサーあるある”は笑って泣いて、頷けるものばかり。だが著者はまだ28歳で、アラサー界の入り口に立っている。きっと30代に突入してからの作品は、もっとエッジがきいたものになっているはずだ。次回作も楽しみでたまらない。
文=佐藤結衣