90歳の朝はランジェリー選びから。「結婚」はマストじゃない。フランス人に学ぶ、いさぎよい生き方

暮らし

公開日:2017/2/14

『フランス女性は80歳でも恋をする』(野口雅子/幻冬者)

 

 「フランス人は~」という本に、いつも惹かれてしまうのはなぜだろう。

 『フランス女性は80歳でも恋をする』(野口雅子/幻冬者)は、パリ在住20年の著者が出会ったフランス人マダム55人が語る、美と生き方の秘訣が満載。思わず手に取りたくなる一冊だ。

 

いくつになってもオンナを捨てない

 

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 90歳のマダム・コンシニーの1日は、きれいなランジェリーを選ぶことから始まる。たとえ、予定のない日でも。その理由はこうだ。

「いつ新しいアマン(恋人)に出会うか、わからないじゃないの」

 フランス人は、日本人ほど年齢を気にしないそうだ。長い付き合いでもお互いの年は知らない、なんてことも。だから、年を重ねることが恋愛をしない理由になんて、ひとつもならないのだ。

 何かというと若手がちやほやされがちな日本だが、彼女のようにいくつになっても「いつ、どんないいことがあるかわからない」と、真冬にピンクのペディキュアを塗る心意気でいたいものだ。

 

「ノン」と言うことを恐れない

 プレゼントされたものが趣味に合わなかったり、気乗りしない旅行に誘われたりした時、あなたならどうするだろうか?

 フランス女性たちは、恐れることなく「ノン」と断るそうだ。和を尊ぶ日本人にはかなりハードルが高めだが、他人に嫌われたくない一心で無理をして疲れた経験は、誰にでもあるだろう。

 著者の友人、サビーヌはこう語る。

「すべての人に好かれるわけがないし、断ったり断られたりは普通のことだと思う」

 「ノン」は自分の意思表示であって、ごく自然なことなのだ。ちなみに、サビーヌは10年以上暮らしている彼からの、再三のプロポーズにも「ノン」と断り続けたとか。

 自分に正直で、毅然と「ノン」と言える女性は、嫌われるどころか、追いかけたくなる存在になるのかもしれない。

 

愛に「結婚」はマストじゃない

 俗にフランス婚と呼ばれる事実婚、同性婚、未婚出産も多いフランスでは、パートナーと「結婚すること」はそれほど重要ではないようだ。

 アラサーの公務員、ジュリーはこう言う。

「役所に届けたからといって愛が保証されるわけでもないし。(中略)それに、いつ2人の関係が終わるかもわからないし」

 随分と現実主義に感じるが、これこそロマンチストだと著者は言う。彼女たちが大切にしているのは、書面ではなく、今お互いに愛し合っているかどうか、だからだ。別れを予感させるようなクールな発言も、2組に1組は離婚するお国柄では的を射ているという。フランス女性の生き方の基本は、自由に、自立して、人生を楽しむことなのだ。

 婚活に一生懸命の日本人も、「結婚」という呪縛から解き放たれたら、案外すぐ素敵なパートナーと出会えるのかもしれない。

 本書に登場するマダムたちは、みんな凛としていて、かっこいい。それは、何よりも自分を大事にしているからだろう。

 年齢を重ねても「私らしさ」にこだわる彼女たちを見ていると、丸まっていた背中を、ピンと伸ばして歩き出したくなる。

文=吉田裕美