執事とお嬢さまの恋のゆくえは?『執事様のお気に入り』のその後を描いた続編&ファン待望の完全新作が発売!
公開日:2017/2/20
恋に障害はつきもの。むしろ盛り上がるためのスパイス。それが少女マンガならばなおさら。お嬢さまと執事という響きだけでもときめいてしまう2人の、型破りな恋を描いた『執事様のお気に入り』(津山冬:ストーリー構成、伊沢玲:作画/白泉社)。大人気作の続編『執事様のお気に入り Encore!』と、ファン待望の完全新作『百花万華鏡』(伊沢玲/白泉社)がこのたび同時発売された。
両親の死をきっかけに、名家だった祖父母の家にひきとられ、全寮制の名門学校に通うことになった良が出会ったのが、「B(バトラー)クラス」――完全無欠の執事を育て上げる実力主義の教室で最優秀を誇る伯王。超御曹司なのに、実力だけで評価されるために執事としての腕を磨き上げていく彼と、名家のブランドにはまるで頓着しないマイペースな良は、高校生らしい純真さで恋に一直線ながらも、その想いに決して溺れず、自分の足で立つために努力し続けるというまさに理想のカップル。
どんなときもポジティブで笑顔を失わない良の姿に憧れる一方、仕事も有能なうえに家事も料理も全部得意でいやがるどころかむしろ率先してやってくれて、疲れた彼女においしい紅茶を淹れてくれるなんてどんだけデキた男だよ……! と、大人ほど読めば伯王に恋してしまうに違いない。高校を卒業して婚約したふたりのその後を描いた『Encore!』でも、伯王のデキる彼氏っぷりは健在。単身パリにわたった良への想いを募らせる溺愛模様もぞんぶんに味わえるが、本作の読みどころはふたりというより、その周辺の人たちのその後話。真琴に仕える生真面目なサイボーグ執事・仙堂や、良に片想いしていた執事・恕矢と紗英の恋など、“実は御曹司”の伯王とちがって身分差が立ちはだかる彼らがどんなふうに想いを実らせていくのかファン必読の一冊だ。また、伯王命な庵と隼斗に、果たして彼女ができる日はくるのか、良を支え続けた友人・薫子の意外な変貌などにもご注目。
そして満を持しての新作『百花万華鏡』もまた、努力を怠らない健気な姫君の物語。「花」と呼ばれる名君たちが平和な治世をつかさどるなか、王族に課せられるのは治領である「葉(くに)」の人心をつかむこと。本作は、名の知れた名君を母にもちながら、地味・平凡・威厳なしで人気の底辺をうろついている残念姫君・瑠華が、いかに自分だけの「華」を手に入れていくかが描かれる。不器用ながらもまっすぐに、自分にも大切な人にも誇れる自分であるように。その姿勢はどこか『執事様のお気に入り』に通じるところがあり、読んでいるこちらもスッと背筋が伸びるような感覚を覚える。
もちろん純粋な恋にときめくことも忘れていない。王族査察官として彼女を監査する立場にありながら陰でサポートし続ける、実は皇子である鷲麗(じゅり)とのひそやかなる関係がどのように発展していくのか。個人的には人気とりに命をかける隣国の王女・茉那のつきぬけた性格がツボなので、瑠華の恋と成長にどのような影響を与えていくのか今後に期待していきたい。
文=立花もも