古舘伊知郎が泣いた!? 今夜放送「トーキングフルーツ」に西加奈子登場! 『i』と「報道ステーション」とプロレス…“指もとの棚橋”とは?
更新日:2017/2/21
ラストシーンをモチーフに、ボール紙にクレヨンで描いた世界観を360°にわたって表現した、西加奈子の個展「i」。小説『i』(ポプラ社)を手にした人の波が絶えることのなかった同展は、会期を1週間延長するほどの盛況のうち閉幕したのだが――会期中のある夜、ひとりの男がそこへと向かった。『サラバ!』を読み、もう一度“信じる”ということに思いを馳せ、『i』の主人公とその親友が至った思い、会話に“泣きました”と語る古舘伊知郎だ。
「古舘伊知郎が巷で噂のあの人と濃厚トーク! ゲストゆかりの地で全編ロケ! 古舘が事前にゲストを調べ尽くし、古舘だからこそ聞ける話を引き出す!」――大人のトーク番組『トーキングフルーツ』、2月21日(火)放送回(全国フジテレビ系24:35~25:05)は、作家・西加奈子がゲスト!“行きたかったのに~!”という声がいまだ途切れることのない、この個展会場を舞台におくられる。
国内のヘイト問題やシリア難民のニュースを見て、思うところが溜まり、執筆されたという『i』に軸を置き、古舘のトークは、西加奈子の“問題意識の発露”にいきなり切り込んでいく。シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の養子となった主人公は、≪選ばれた自分がいるということは、選ばれなかった人がいるということ≫という罪悪感を胸に成長していく。そして9.11をはじめ、世界中の凄惨なニュースを見るたびに苦しみ、祈り続ける。やがて彼女は、ニュースの死者を書き留めるようになる――トークでは、『報道ステーション』キャスターとしても、膨大な死者の数を読みあげてきた古舘に対し、西が問う場面もある。犠牲となった、そのひとりひとりに思いを巡らせるたび、身を削ってしまうような自身の想いに対峙したとき、どう向き合っていたのか――。
リズミカルに繰り出されていくトークは、観る人も取り込みながら、その思考の扉を開けていく。西加奈子にとって、小説を書くこととは何なのか? 小説を書くことは苦悩の浄化なのか? 仕事って何なの?――なかでも盛り上がるのが、西ファンならお馴染みのプロレス談議だ。直木賞受賞会見でも「プロレスからはむちゃくちゃ勇気をいただいてます」と語ったプロレス好きの西と、プロレス実況中継者としても一世を風靡してきた古舘とのタッグマッチは必見! 大好きなプロレスを楽しくみるために、西が心に決めていること、古舘が明かす山本小鉄×上田馬之助、伝説の壮絶試合の秘話、そして西が敬愛する新日本プロレス・棚橋弘至選手のこと……そして、古舘と言えば、「燃える闘魂」「人間山脈」「掟破りの逆サソリ」など、“過激実況”のなかで数々の名フレーズを生んできたが、それはこの日、なんと西にも炸裂!
「指もとの棚橋」――古舘が西につけたフレーズ。そこにある意味とは……? それはぜひ、放送で目撃してほしい。
昨年11月に『i』が刊行されてから2ヵ月。わずかな期間であるのに、世界と人を巡る状況は変わってきている。同作を読んだ人であれば、トーク内でも2人が言及するトランプ大統領の「アメリカ第一主義」が、その内容に色濃く重なってくるだろう。西加奈子が“現代”に挑んだ『i』は、“いま”読み、感じるべき作品。番組とともに、その小説世界もぜひ、たっぷりと味わってほしい。
文=河村道子