金正恩は自己愛性パーソナリティ障害!? 隠された北朝鮮の実情と「金正恩の気質」を明かす、衝撃ノンフィクション!
更新日:2017/3/27
2月13日、マレーシア・クアラルンプール国際空港で起こった、金正男(キム・ジョンナム)氏の暗殺事件。そして3月6日には、北朝鮮が4発の弾道ミサイルを日本海に向け発射。まさに、やりたい放題の北朝鮮。果たしてこの国とどう向き合えばいいのか。
こうした中、北朝鮮の実情や金正恩についての様々な情報を提供してくれるのが、『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日(講談社+α新書)』(牧野愛博/講談社)だ。
著者の牧野愛博氏は朝日新聞ソウル支局長。そのためか、まえがきの最後に「本書の内容は個人的見解」との一文も。その分、金正恩の生い立ち、素性、恐怖政治から、北朝鮮の様々な実情、たくましく生きる市井の人々の様子に至るまで、情報網を駆使して得た情報が惜しみなくレポートされている。
まず筆者がなるほどとうなずけたのが、「金正恩の気質」についての指摘だ。かつて数十年間にわたって北朝鮮分析を担当してきた日本政府の元当局者の談話として、「(金正恩は)自己愛性パーソナリティ障害ではないか」という意見を示しこう続けている。
過剰に自分を愛し、特権意識を持ち、自分への同調を迫る。自分が受け入れられないと見るや、残虐なまでの過剰な反発を見せる。「自分の指示を聞かなかったから」という理由で、次々と高官を処刑し、親子ほども離れた高官たちの前で、ふんぞり返って尊大にふるまうその姿こそ、この症状の特徴といえる。
第1章では、そうした気質が育まれることになる、生い立ちが詳述される。正恩の母・高英姫は存在が深く秘された存在だった。在日朝鮮人の娘として生まれ、金正日や高級幹部を接遇する「喜び組」に選抜されたことが契機となって金正日の3番目の妻として迎えられた。そのため、正恩と母は隔離された場所でずっと過ごしている。本書が紹介する韓国の情報筋の「金正恩が最も憎んだのは父、金正日ではなかったか」という分析は、父の側近中の側近(張成沢)や異母との間に生まれた長男(金正男)の処刑という現実を前に、大いに説得力を持つ。
また、タイトルにもあるように、本書には北朝鮮の核問題に関しても多くの情報が集められている。その中のひとつとして、米韓軍の「作戦計画5015」(金正恩斬首作戦)に触れている。これはいわば「いかに正恩を斬首するか」というプランだ。ただ著者は、それほどに北朝鮮がたやすい相手ではないことも、軍事力などを論拠に指摘している。
一方で、きな臭い話ばかりではなく、北朝鮮で「たくましく生きる人々」の様子も紹介されている。そのひとつのエピソードとして、「不老不死(長寿)」の研究所が、脱北した元研究員の証言と共に登場する。この研究所では、健康にいいとされるものや文献が世界から集められ、歴代の指導者のために日夜研究が行われているという。さらに赤十字病院には、金日成、金正日と同じ年、同じ体格の人間が多く集められ、研究所が考案した健康食の効果を確かめる臨床実験も行われていたと明かす。しかし研究の甲斐もなく、金日成は82歳、金正日は69歳で死去している。
さて今後、北朝鮮をだれが制するのか? 著者もまえがきで記すように、その重要なキーマンとなるのが米国のトランプ大統領だろう。
トランプ氏は「自分こそは最高の交渉人」という自負が強い人物だという。誰もが刮目するような素晴らしい取引をまとめたいという野望に燃えている。北朝鮮に対してもそうだろう。
両者が向き合うのはもはや時間の問題だ。著者のみならず、世界中の人々がまさに固唾を飲んで、その成り行きを見守っていくに違いない。「平和裏に解決へ」と、願いながら。
文=未来遥