散歩やトイレはどうする? いぬとわたしが知っておくべき「ペット防災の3R」

生活

公開日:2017/3/11

『いぬとわたしの防災ハンドブック』(いぬの防災を考える会/パルコ)

 東日本大震災から6年。東北の復興が続く中、広島の土砂災害や熊本地震をはじめ、豪雪、洪水、大火災など多くの災害が日本各地で発生した。災害は決して他人事ではなく、いつ我が身に降りかかるかわからないと、危機感を持つ人も増えている。

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 そして、あの大震災で「ペットだって被災者」なのだと、私たちは知った。人間同様にペットの防災は気になるところ。犬を飼っている友人は「避難所で他の避難者にどう配慮すれば良いのか」「病気やケガの際の対応」が一番心配だという。

 防災意識が高まるこの時期、『いぬとわたしの防災ハンドブック』(いぬの防災を考える会/パルコ)を教科書に、「避難所での配慮」と「病気やケガの対応」を学びながら、あらためてペット防災について考えてみよう。

いぬとわたしが「避難」するときの心構え

(1)「犬嫌い、動物嫌いは意外に多い」ことを念頭に!
 本書によれば、日本のペット人口は3割。事情により飼えない人を除いても半数以上の人が動物に興味がない・苦手だと言える。避難所には、動物アレルギーの人がいる場合も多々ある。「犬がいるから特別扱いしてほしい」は、絶対にNG。あなたにとってオンリーワンでも、他人にとってはナンバーワンではないことを、飼い主はなによりも肝に銘じなくてはならない。「避難所にいる全員が被災者」であることを忘れないようにしよう。

(2)「同行避難」=ペットと一緒に過ごせる・ではない
 環境省『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン』では、飼い主がペットを連れて安全なところまで避難する「同行避難」を推奨しているが、ペットと飼い主が避難所の同じ室内で過ごせることを意味するものではない。先述したように動物嫌いやアレルギーの避難者もおり、ペット受け入れOKの避難所だとしても、犬だけが隔離される場合もある。そうなったときに吠えたり騒いだりしないように、ふだんからケージに慣らす「クレートトレーニング」をしておきたい。また、ケージをはじめとする犬用品や食料などは、飼い主が責任をもって用意しておくべき。犬用の防災セットを作ろう!

 地域の避難訓練には、ぜひ愛犬と一緒に参加して、様々なシミュレートをしておこう。そこで近所の人たちにも愛犬を認知してもらい、犬仲間を見つけて、いざという時に助け合える関係・環境を作れたら、みんなが安心だ。

(3)散歩・トイレやごはんタイムをルーティーンにしない
 犬は、体内時計がしっかり働いている生き物で、食事や散歩も決まった時間になると自分から飼い主にアピールしてくる。しかし、災害時や避難所暮らしでは、時間通りに生活出来るわけではない。それが犬にとってのストレスになるし、吠えたり暴れたりすれば他の避難者にも迷惑になってしまう。

 ふだんから、食事の時間をある程度ずらしたり、散歩などのタイミングを変えたりする訓練をしておきたい。また、散歩=トイレの犬も少なくないが、ペットトイレやペットシーツで用を足せるようにしっかりしつけておこう。

いぬがケガや病気になったらどうする?

(1)避難時に用意しておきたい犬用シューズと愛犬のプロフィール
 食料や水、トイレ関連のアイテムは、人間とほぼ同じなので、準備の際にイメージしやすい。案外忘れがちなのが「犬用シューズ」だ。災害発生時には地面にガレキが散らばり、歩けば足をケガしてしまうこともある。大きな犬は一緒に歩いて行くことになるので、ぜひシューズを用意しておきたい。ふだんの散歩でも慣れておくと避難時にスムーズだ。

 また、混乱したペットが逃げ出してしまうこともあるので、「写真」や「特徴」「病歴」などの入った「ペットのプロフィール」を作っておこう。簡単なものを作成し、プリントアウトして防災セットに入れておくと安心だ。

(2)ケガは水洗い+清潔な布で処置
 災害時にケガをした場合、人間の傷薬などは犬にはNGな場合もあるので、「水でよく洗い流し」「清潔な布で覆う」ように保護しよう。火傷の場合も「とにかく水で冷やす」。

 すぐに獣医さんに診てもらえない場合は「ケージレスト」――手当てをした上で、ケージに入れて、できるだけ動かさないのがベターだ。

(3)ストレスチェックと対策
 慣れない避難所生活でストレスがたまるのは、犬も人間も一緒。シニアや予防接種をしていない犬は、免疫低下から病気になりやすい。ふだん以上に声をかけたり、身体を触ったりして、安心させてあげると同時に、体調の変化もチェックしよう。

ペット防災の「3R」

 避難時の心構えとケガの対応について駆け足で紹介したが、ペット防災は、平時の準備としつけにかかっている――ということが、おわかりいただけただろう。

 本書にはシリーズとして『ねことわたしの防災ハンドブック』もある。以前、ここで取り上げた「災害時、にゃんこはどうする? 猫のための防災知識」と併せて読んでいただければ幸いだ。

 そして、本書が強く訴えているのは「ペットの防災対策=人の防災対策」であるということ。あなたが防災意識をもって「準備:Ready」し、正しく「避難:Refuge」し、いぬやペットを「責任:Responsibility」を持ってケアできなければ、あなたもペットも救えないのだ。

 他の人にとってナンバーワンじゃなくとも、あなたにとって愛犬はオンリーワン。愛犬にとってもあなたはオンリーワン。今一度、いぬとあなたの防災対策を見直してほしいワン!

文=水陶マコト