「悩むヒマがあったら動け! 」は案外正しい!? 悩みから解放される「行動」とは

暮らし

公開日:2017/3/22

『悩まなくなる考え方』(白取春彦/大和書房)

 コンビニの菓子パンを2つ選ぶだけで10分近く悩む。マンネリ防止のため「昨日とは別のものを」と思うと、一昨日と同じ組み合わせになる。それを避けようと、レジ横のホットスナックやドーナツにも目を走らせるものの、選択肢は増えるばかり。そのうち「やっぱりおにぎりにしようか」などと、また悩む。この繰り返し……。

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いくら考えても状況はいつまでも変わらない。状況を変えるのは、ただ行動だけだ。

 頭でっかちになりがちな人へ向けられたシンプルな教訓。本書『悩まなくなる考え方』(白取春彦/大和書房)では、冒頭「はじめに」の4ページ目に、この苦言が書かれている。「わかっちゃいるけれど」と言い訳を始め、悩んでばかりで行動しない、私のような人を内面から変え、状況を変える行動を促そうというのが、本書の狙いだ。

 本書によると、悩む人に共通する特徴は、ケチ、怠け者、見栄、妄想癖の4つ。前述した私の昼食選びを例に取れば、以下のように解説できる。

 昼食に極力金を使いたくないから菓子パンで済ませる=ケチ。料理も洗い物も面倒=怠け者。いつもいる店員に「ピザパンの人」とか思われたくない=見栄。自分が選ぶ品物を店員に記憶されていると思い込む=妄想。

 いずれも思い当たる節があると、つい目を逸らしてしまう事柄ではないだろうか。この4つの特徴は、たとえば人間関係に悩んでいても同じこと。気に入らない人の言動を許容できないのはケチだから、自分を変えて関係を改善しようとしないから怠け者――といった具合だ。

 こうした自分の中にある特徴に気づき、それらを取り除けば悩まない考え方をするようになるという。そうは言っても、具体的にどうすれば悩まなくて済むのだろうか。実際の行動で悩み事から解放される方法をいくつか挙げてみたいと思う。

 手軽かつ即効性のあるものとしては、顔と手を洗うこと。洗面所へ行くだけでも、目の前の作業から離れることができ、よい気分転換になる。シャワーを浴びる(風呂に入る)ことも効果的なので、状況に合わせてうまく活用してほしい。

 普段の習慣として運動をし、筋力をつけておくことも重要。大腿筋や背筋の筋肉量アップにともなって、積極的な気持ちになりやすくなるとか。目安は、スクワットや腹筋、腕立て伏せなどを各50回(各10回×5セットでもOK)できる程度の身体づくりだ。

 問題だと思うことを書き出してみるのもおすすめ。まず、深夜にひとりで思いつくままに、悩みや困っていることを紙に書き出す。このとき、感情や勢いに任せて、ひとつ残らず問題を書き出すのがポイント。それができたら、その用紙は2日ほど放置し、3日目の昼食後に改めて読み返す。書き出した問題を眺め、以下に当てはまるものを、二重線で消していく。感情的なことや想像、事実として起こらなかった事柄、そして予測や憶測、期待、思惑、善悪や良否、好き嫌いなどが含まれているものすべて。そうして最終的に残った問題こそが、いま自分が解決すべきことだとわかる。

 この作業で大事なのは、悩みを紙に書き出すという行為そのもの。そうすることで、重大だと思い込んでいた悩みが、案外ちっぽけなことだったと実感できるのだ。よく、悩み事を人に聞いてもらうとスッキリするというが、これはその応用版といえるだろう。

 本書では一貫して痛烈な指摘が書き連ねられている。なぜ自分がすべきことをせず、悩んでばかりで時間と金を浪費するのか。それは、その人が怠惰だから。自分のすべきことに対して真剣でないから――。

 これらはいわゆる愛のムチだ。いっそ全身のミミズ腫れをも辞さないレベルの覚悟がないと、本書の説教は、無慈悲な教師の悪口で終わる。しかし「自分はただの怠け者だ」と受け入れられれば、鬼教師の言葉を素直に聞き入れられるだろう。もし本書を読んでイラついたら、数日寝かせて再読するとよい。事実、私はそうして読んだ。

文=上原純(Office Ti+)