「うつ病」を説明できますか? 自分は大丈夫!と思わず、知っておきたい「うつ病」のこと

健康・美容

公開日:2017/3/22

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    『新版 うつ病をなおす』(野村総一郎/講談社現代新書)

「そもそも、うつ病って何?」と聞かれて、明確に答えられるだろうか?

 それは「うつ病」になってしまった当事者や、その家族にとっても難しい質問かもしれない。快復には病気への正しい理解と治療方法を知ることが必要だが、カウンセリングを受ける、薬を飲むという対処療法に追われて、「正しい知識」が案外おろそかになってはいないだろうか?

『新版 うつ病をなおす』(野村総一郎/講談社現代新書)は、「うつ病の症状」「種類」「治療方法」「予防」「うつ病が生じる理由」といった「うつ病」に関する知見を詰め込んだ一冊である。

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 本書のポイントは「最新の情報であること」。また、「分かりやすさに力点を置きすぎて、知識レベルが著しく落ちていたり」「逆に科学的厳密さを追求するあまり難解になり過ぎている」類書とは異なり、「専門性を維持しながらも、分かりやすく」なっていることだ。

「分かりやすく」感じるのは、実際の症例を短編小説のように読めるからかもしれない。本書では、たとえば「41歳ベテラン教師の女性〇〇さんの場合」といったように、人物を通して様々なうつ病の症例を知ることができる。

 さて、「うつ病」について、少しずつ理解を深めていこう。「うつ病」を治したいなら、まずは「敵を知ること」が大切だ。

「うつ病」は「ゆううつ」な気分になることだが、誰しも落ち込むことはある。そういった「正常のゆううつ」と「病気としてのゆううつ」は何が違うのだろうか。

 一つは「うつ病の場合、必ずしもひどいストレスに出会ってはいないのに、ひどくゆううつになる」こと。二つ目は「考え方が正常者とは質的に違う」(たとえば、『自分の存在は世界平和の邪魔をしているので、自殺する』といったような、異質な考え方をする)。最後は「ゆううつの持続が極端に長い」。何か失敗をして「自分はダメだ」と落ち込んでも、2~3日で「まぁ、そこまでじゃないか」と考えられれば、それはうつ病ではないそうだ。

 さらに「うつ病」の特徴をいくつか挙げてみよう。
・楽しみも悲しみも感じない(虚無感がある)。
・悲観的な考えから脱け出せない(さらに、その思考が極論になってしまいがち)。
・自己否定の妄想(現実的に考えて「そこまでじゃない」ことにも、過剰に反応。結構なお金持ちなのに、「破産をする」と思い込んだりする)。
・意欲が湧かない(「めんどくさがり」という性格が原因でやる気が起こらない場合は、「つらさがない」。うつ病の場合、「やらなければいけないのに、できない。こんなことでどうする」と感じるのに対し、「めんどくさがり」は「やんなきゃなぁ」ぐらいは思うものの、「つらさ」とは無縁だとか)。
・明るく振る舞うこともある。
・眠れない、眠くてたまらない。
・食べることにも意欲が湧かない。
・何となく体の具合が悪い。
・状況がよくなっても変化しないことが多い(物事が好転しても、それでゆううつが晴れない)。
・人づきあいが悪くなる。
・趣味・気晴らしもかえってつらい。(例えば正常のゆううつなら、趣味のカラオケで歌ってストレス解消になるのだが、うつ病の場合はこのようなレジャーがかえってエネルギーの枯渇になってしまう)。

 以上、簡単にうつ病についてまとめてみたが、うつ病は単純に説明できる病気ではない。そもそも「メランコリー型うつ病」「現代うつ病」「気分変調症」「季節性うつ病」「双極性障害」(正確に言うと、うつ病とは似て非なる病気らしい。識別が難しい)などなど、うつ病(とそれに似ている心の病)は数多く存在するし、個人差もある。
 本書ではそれぞれの「うつ病」について詳しく説明しているので、大いに参考になるだろう。

 そして肝心の「治療方法」の最新知見も著述されている。
 うつ病の治療法は「薬物療法」「精神療法」「生活療法」の三つを平行しながら治していくそうだ。治療方法は全部紹介したいくらいだが、詳しくは本書を参考にしてほしい。このストレスフルな現代社会で、いつ誰がこの病にかかってもおかしくない。うつ病になる前に正しい知識を持って備えておくことも大切だろう。

文=雨野裾