救急車の費用はニューヨークで5万円、日本は◯◯円!? あらゆる面で日本の医療は世界一という知られざる真実!
更新日:2017/4/10
海外に出てみて初めてわかる日本の良さは、人それぞれにいろいろとあるだろう。中でも病気になったことがある人なら、おそらく本書の指摘に大きくうなずくに違いない。内科医として米国留学経験もある真野俊樹氏が著した『日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一(講談社+α新書)』(講談社)は、日本の医療がいかに国民にとって親身なものになっているかを教えてくれる。
本書に記されている実際にあったエピソードから紹介しよう。
ある会社経営者が商談でアメリカに行き、夜に宿泊先の高級ホテルで腹痛に襲われ意識不明の状態になる。気がつくと病院のベッドの上で、すでに緊急手術を終えた後だった。原因は腸間膜動脈血栓症という病気で死の危険もあったそうだ。そして退院時になり、請求書を見て驚く。そこに記されていた金額はなんと約1億円!? 弁護士を入れて交渉し、最終的には3000万円ほどの出費になったそうだ。
この事例は、お金持ちは優遇されて最適・最先端の医療が提供されるが、一般庶民にとってはその限りではないという米国の医療事情を象徴しているそうだ。
また日本では救急車は無料だ。しかし海外では有料のケースが多い。その費用はニューヨーク(米国)5万円、バンクーバー(カナダ)6万円、ゴールドコースト(オーストラリア)9万円など、日本人からすると驚きの価格だ。
本書では、こうした具体事例なども織り交ぜながら、日本の医療の様々な側面(技術・サービス・保険制度・医療施設の数や医療機器の充実度ほか)を世界(米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、中国、韓国)の医療事情と比べながら評価していく。その結果は、本書タイトルにもあるように「10勝5敗3分けで世界一」となる。
中でも日本人に生まれてよかったと思えるのは、著者も強調している「公平性」で世界一という点だろう。コンビニを凌駕する数の医療施設が全国に点在し、3割負担ながらも比較的安価な費用で、「だれでも」「いつでも」「どこでも」医師にかかれる恵まれた国は、日本しかないという事実だ。
また本書では、日本の医療が「肺がん」「大腸がん」において5年後生存率でトップを誇り、「乳がん」は米国に次いで2位であるなど、がん医療において高度な技術を有していることも教えてくれる。その一方で、日本医療のマイナス面や課題(薬を出し過ぎる、緊急時に病院をたらいまわしにされる他)の指摘も忘れてはいない。
なにより頼もしく感じるのは、著者が「医師道」と表現する、日本人医師たちの根底にある利他精神だ。本書によれば、日本人医師の収入は一般のサラリーマンよりは高いが、米国の専門医師に比べればかなり少ない報酬である一方で、労働時間は世界トップの長時間勤務という環境にある。そうした中でも世界一の医療水準が保てる背景には、「医師道」という志を忘れない、日本人医師の存在があるからだという。
普段は当たり前のように感じている日本の医療とサービス。本書を読むと、その裏には様々な医療従事者の努力や国の配慮があることが見えてくる。こうした日本の医療を維持し成長させるために、国民はどうするべきか? ぜひ、本書巻末にある著者の提言も一読して、医療大国ニッポンを誇りにしていきたいものだ。
文=町田光