「大切なことは午前中に。」松浦弥太郎が教えてくれる毎日の暮らしのヒント『日めくり弥太郎』
公開日:2017/3/24
“ていねいな暮らし”をめざす人にとって、憧れの存在ともいえるのが松浦弥太郎氏。NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』でも話題になった『暮しの手帖』の元編集長である彼が、クックパッド社に転職したのは2015年のこと。まったくの別分野になぜ今!? と業界に激震が走ったが、同年にはWEBサイト「くらしのきほん」をオープンし、「基本の発見」を大切にする姿勢は何一つ変わっていない、むしろ進化し続けていることを日々知らしめている。
そんな松浦さんがこのたび刊行したのが「今日をていねいに」がモットーの『日めくり弥太郎 日日のきほん』(松浦弥太郎/マガジンハウス)。「ああ今年もていねいな暮らしとは程遠い……」とため息をつくあなたにぴったりな日めくりカレンダーだ。
5 大切なことは午前中に。
成功している人や、すごい人は、口を揃えてこう言います。「重要なことは午前中に終わらせなさい」。よく言われることだからこそ、普遍の真理。肝に銘じておきましょう。集中力のある午前中に、大切なことを終えておく。午後になると体は疲れるし、意思決定の能力も落ちるもの。年齢を重ねれば重ねるほど、このルールを守ることです。
それ……知ってる……っ。と、ぐうの音も出ないお言葉をさっそくいただいた5日目。夏休みの宿題は午前中に、とは日本中の元小学生が聞いたことのあるセリフでしょう。そうなんです。朝、きちんと早起きをして窓を開けて、やるべきことをさっさと片付けちゃったあとの、一日の長いこと! 有意義なこと! 自然と食事の時間は正確になるし、だらだらと仕事や家事を夜まで持ち越すこともない。そうすれば当たり前に日付が変わる前には眠たくなって、翌朝はまた早起きできる。なんという正のスパイラル! ……わかってる。わかっちゃいるけどできていない。そんなくらしの基本にいきなり立ち返らされました。ていねいな暮らしはやっぱり、当たり前のことから始まるんですね。肝に銘じます。
17 プライドを捨てる。何事も我慢する。
プライドとは、振りかざして武器にするものではありません。プライドは内に秘めるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。プライドを捨てること。何事も我慢すること。この二つは、尊敬する名エディターに教えていただいた、仕事を長く続ける秘訣です。「いちいち腹をたてて闘っていたら仕事は進まない。プライドを捨てなさい。違うと思っても我慢しなさい。常に冷静でいなさい」と。貴重な教えをいただいたと思っています。
めくればめくるほど「わかっちゃいるけど」の連続な本カレンダー。これって、仕事でもプライベートでも、すべてにおいて言えることじゃないでしょうか。家族に対しても「なんだその言い方は!」といちいち腹を立てていたら、問題は何も解決しません。そして「自分は悪くない!」と信じ込んでいるときほど、視野狭窄になりがちなのが人間。あとから「間違っていたかも」と気づけたときには、事態は悪化しさらに収拾がつかなくなっていることもある。本当に正しかったのだとしても、だとしたら尚更、正義は振りかざさずにやるべきことを全うすべき。そんなことを思わされた一言でした。
31 それは美しいかといつも考える。
姿勢。しぐさ。衣食住。すべてに対していつも「それは美しいだろうか?」と考えます。手がけている仕事があれば、「できあがったそれは美しいか?」と考えます。できあがるまでの仕事ぶりが美しいか? ありようとして美しいか? 繰り返し、繰り返し、考えています。
毎日壁に貼って詠唱したい一言です。美人は造形も大事だが、それよりもっとしぐさが大事、とはよく言われることですが、素敵に暮らしたいならまず、己のありようを見つめ返すことが大事。食器やら洋服やらインテリアやらにこだわるのももちろん大事ですが、仮に家がモノで溢れていたとしてもそれが自分にとって必要で、美しいのであればそれでいい。違うのなら片付ければいい。必要以上に声を荒らげていないだろうか。その「まあいっか」は自分の理想の上にあるだろうか。行動のひとつひとつで己を見返すことの積み重ねが、ていねいで美しい暮らしにつながるのです。
他にも「自分一人でできることはない」とか「頭ではなく心を使う」「ありがとうで始まり、ありがとうで終わる」など、くらしに大事な基本が満載のカレンダー。すべてを一気に実践しようとすればパンクしてしまうかもしれないが、毎日一つずつならどうにかなるかもしれない。積み重ねた先できっと、知らず身についていることもあるだろう。松浦さんの優しい言葉で、ぜひ初心に立ち返ってみてほしい。どれも朝いちばん、一日の始まりに含むように読むのがおすすめです。
文=立花もも