資料が見つからない、作業を後回し…“ボトルネック”を解消して「プレミアムフライデー」を実現させる方法とは?
公開日:2017/3/31
2月から始まった“プレミアムフライデー”。政府と経団連や各業界団体で構成された“推進協議会”が旗振り役となり、月末の金曜日は午後3時に終業して、余暇を活用しようというもの。主な目的には、働き方改革、消費の促進などが掲げられている。先日、初回を終えたところだが、導入された企業はまだ限られ、体験した人からは歓迎の声もある一方、他の日へのしわ寄せを心配する声もある。また、それ以前に、実施するには会社の体制が全く整っていない、との意見も多数聞こえてくる。浸透にはまだまだ時間を要するだろう。
だが、人口減少と高齢化が進む日本の現状からすれば、長時間労働の是正や男女共同参画のあり方は、社会の課題として、ますますクローズアップされるはずだ。本書『1時間の仕事を15分で終わらせる』(清水久三子/かんき出版)は、長時間労働を経験してきた当事者として、断言する。
・長時間労働は「病気」です。健康、メンタル、家族、友人関係…、気がつかないうちに多くのものを蝕んでいきます。最終的には、自分の人生そのものを破壊してしまうことさえあります。
・長時間労働の「特効薬」は、仕事を最速で終わらせることです。
・大切なのは、絶対に速く終わらせようとする強い覚悟。まずは、常に忙しすぎるのは当たり前ではない、とマインドを切り替えることがスタートラインになります。
長時間労働を尊ぶ時代さえあった日本。ようやく脱却する時が来たのだ。そのかわり、よりスピードとクオリティが求められるようになった。では、どうすればいいのか?
著者によると、基本的に仕事の流れとは「インプット(入力)」「プロセス(処理)」「アウトプット(出力)」の順で進行していくという。スムーズに行けば問題ないのだが、時には「コンディション(体調)」によって“ボトルネック”が発生する。ボトルネックとは、スムーズな流れをせき止めてしまう事柄を意味する。例えば「仕事で使うモノを探すのに時間がかかる」や「やらなくてはいけないことを後回しにしてしまう」といった非生産的な行動や態度が挙げられる。このボトルネックの解消のノウハウと、短時間で知的生産性を発揮するのに欠かせない考え方を、順に説いていくのが本書である。その過程で、仕事の効率を「2倍速」にしていくのが最初の目標。最終的には、本書のタイトルにつながる「4倍速仕事術」を目指そうと提案する。
著者は、外資系のコンサルティング会社に15年在籍。「できるだけ短時間で高い生産性を発揮」する様々な時短術を編み出してきた。これまで延べ5000人へのコンサルタント、育成プログラムの企画や開発において、多くの実績がある。現在は独立し、ダイバーシティ、ワーク・ライフバランスの実現支援をする会社を設立。自らも家庭や育児、仕事のバランスを保ちながら、数多くのビジネス書の執筆、講演、研修など、幅広い活躍をしている。
本章の項目ごとに、短くまとめられた「倍速の心得」は、著者の経験に裏打ちされたアドバイスの宝庫だ。時折、見返せばモチベーションの維持にも役立つだろう。
春は、新社会人だけではなく、異動、転職、育児休暇からの復帰など、職場環境が大きく切り替わる時期。新たな課題を抱える人も多い。自分に合う時短術を取り入れるには絶好の機会だ。仕事や生活の効率化を図るだけではなく、長時間労働から解放される第一歩となるだろう。
新しい習慣によって“プレミアムタイム”を創り出す楽しみ。まずは、そこから始めてみよう。
文=小林みさえ