絵画にまつわる事件に巻き込まれていく――。今、注目の若手ミステリ作家が描く『彼女の色に届くまで』
公開日:2017/4/6
主人公は僕でもあり読者の方々でもある
“持っている人”と“持っていない人”──ストーリーに通底する、そのテーマには、似鳥さん自身の気持ちが色濃く反映されているという。
「どんな仕事でもそうだと思うのですが、小説家という僕の仕事も、頑張って来たから評価してもらえるという甘いものではないので。なかなか芽が出ない、どうしよう、と思っているうちに、小説を書き始めたばかりだという人が、すぱーんとベストセラーを出して、自分のはるか上の方へ飛んで行ってしまう。礼を書いているときも、“そうだよね、つらいよねぇ”って、つい声を掛けていました」
幾度も経験してきたつらさ。だが、自分のなかに溜まっていったものを、本作では、いい形で出すことができたという。
「以前から、このテーマは自分のなかにあったんです。でも、“今”書けてよかったなと思います。才能のあるなしに悩む若い方はもちろん、僕と同世代、それ以上の方にも届けられると思うものが書けたのは、僕自身、歳月をかけ、続けてきたものがある“今”だからこそ。“これで終わってなるもんか!”“だろ?”って、物語を通して、読者の方と対話したいですね」
本を閉じたあとに残るのは、やさしいエールだ。
「悩めるこの主人公は、僕でもあるし、おそらくは、読者の皆さん自身でもあると思います」
取材・文=河村道子 写真=下林彩子
『彼女の色に届くまで』
高校の美術部に所属する緑川礼は、学校の絵画を壊した疑いを掛けられ、美少女だが変わり者の同級生・千坂桜に助けられた。礼の誘いによって絵を描くようになった桜はその才能を表し……そして2人は絵画にまつわる数々の事件に遭遇していく。本格ミステリーとアートを融合させた、ほろ苦く切ない青春ストーリー。
I can Fly!! 似鳥 鶏デビュー10周年キャンペーン
2017年、似鳥鶏さんがデビュー10周年を迎えたのを記念して、今しか手に入らない特別な小冊子を抽選でプレゼントします! 小冊子の内容は、10周年中に刊行予定の新作単行本・文庫にて順次発表されます。お楽しみに!
●応募方法
10周年キャンペーン中に刊行する作品の帯についている〈応募券〉(コピー不可)1枚を郵便ハガキに貼りご応募ください。
(詳しくは各キャンペーン帯をご覧ください)
●10周年中に刊行予定の作品はこちら
3月29日 単行本『彼女の色に届くまで』KADOKAWA
5月10日『モモンガの件はおまかせを』(楓ヶ丘動物園シリーズ第4弾)文春文庫
7月25日『君のために青く光る(仮)』(『青藍病治療マニュアル』改題)角川文庫
8月 新作単行本 光文社
9月『ゼロの日に叫ぶ 戦力外捜査官3』河出文庫
10月『世界が終わる街 戦力外捜査官4』河出文庫(連続刊行!)
11月 単行本『戦力外捜査官5』河出書房新社