人の名前が思い出せないなら○○をすれば良い! 顔と名前を一致させる方法とは?

ビジネス

更新日:2017/4/24

『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』(マガジンハウス)

 顔は出てきたけど、名前が思い出せない。この部屋に何にしにきたのか、忘れてしまった。自宅を出るときに施錠をしたのか自信がない。これって、年のせいなのか? いや、そうではない。

 春の節目には新しい人との出会いも多いもの。けれどもやっかいなのが、おのれの記憶力の悪さ。どうしたら、改善するのか。記憶術のプロ宇都出雅巳氏の『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』(マガジンハウス)によると、次の通り。

これらのもの忘れは、「脳が“フリーズ(動作停止)”」したことによるものだという。したがって、老化による「記憶力低下」ではないそうだ。

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 宇都出氏は、30年にわたり、記憶術と速読を研究。受験生・ビジネスマンへ勉強法を教えている。独自の研究により、記憶力を補う方法を編み出したのだ。

■「マジカルナンバー7」よりすくない「4」

 では、なぜ人の名前が思い出せないのか。そのメカニズムを紹介しよう。

記憶は、短期記憶と長期記憶に大きく分けられる。「さっきまで覚えていた」「もう忘れている」といったもの忘れの類は、短期記憶に属する。短期記憶に記憶する仕組みを「ワーキングメモリ」とも呼ぶ。いわば、脳のメモ帳だ。
問題は、このメモ帳の容量が小さいこと。つまり書き込めるスペースには限りがある。しかも、新しい情報が入ってくると、それまでワーキングメモリに「覚えていた」記憶は「押し出される」ように消されるという。


 しかもこの短期記憶は、「マジカルナンバー7」と呼ばれていた。つまり、人が同時に考えられるのは7つくらい」と言われていた。が、しかし。最近の研究では「7」ではなく、せいぜい「4」くらいではないかとの結果がでているのだそうだ。

 たった4つ…。これが最新科学の現実だ。宇都出氏いわく、人間は、自分の記憶力を高く評価しすぎる傾向にあるそうだ。おのれの能力の低さに愕然とするかもしれない。だが、自己の特性を把握すれば、その能力をマックスまで引き上げる方法もあるというものだ。

 ちなみに老化による記憶力の低下は、このワーキングメモリ自体が働かなくなる。すなわち、「ごはんを食べたこと」「人に会ったこと」すら覚えていない。まったく「もの忘れ」といっても、種類が違う。

 では、一度に4つしか覚えられない脳を鍛えるにはどうすればいいのか。宇都出氏は次のように述べる

記憶できるかどうかを左右するのは、能力よりも圧倒的にくり返しの量です

 受験勉強でも何度もくり返し問題を解いたように、回数を重ねることで、脳内の神経ネットワークが強化され、忘れにくい記憶となる。ただ、くり返しといっても、そんなに唱えている時間もないだろう。もっと効率の良い方法はないのだろうか。ケース別に紹介しよう。

■名前を連呼してイメージしてみよう

 顔は覚えているのに、なかなか名前が出てこない。名前を忘れやすい原因は、「くり返す」回数が少ないことにある。会話上で、相手の名前を口にする機会はそんなに多くはないのだ。そこで対策の1つ目は、なるべく相手の名前をくり返すこと。

「○○さん、今日もよろしくお願いします」「明日、○○さんの空いている時間はありますか?」などと目の前に本人がいるときに、何度も名前を呼べば覚えやすくなる。

 続いては、「関連情報」を増やすこと。例えば、山田さんという人がいたとする。ただ名前だけを覚えるのではなく、細かな経歴など他の情報と結びつけておくと忘れにくいという。そのため「山田さんはかつて有名店で働いていた」「3年前に独立して店を持った」このように関連する「エピソード」も聞き出すようにしよう。

 ただ根掘り葉掘り相手にエピソードを聞き出すわけにはいかないときもある。その場合は、名前から連想できるイメージを貼り付ければ良し。

例:
柳沢さん 柳の木→柳沢さんの頭から柳の木が生えて、ふわふわ揺れている
寺島さん お寺→寺島さんの頭の上でお坊さんがお経を唱えている

 こんなゆるい感じのイメージでいい。名前から連想するイメージを一緒に記憶しておく。すると次に柳沢さんに会ったときに、柳沢さんの頭の上で柳の木が揺れている姿が思い出されて、「柳沢」という名前が脳から引き出されてくるはずだ。

■少しでも思い出せることからたぐり寄せる

 もう1つのケース「何しにこの部屋に来たんだっけ?」。これも老化と間違いやすいが、短期記憶の仕業だ。宇都出氏は、これは「本を読んだのに覚えていない」と同じパターンだという。その場合、「ほんの少しでも覚えていることはないか」それを自分自身に尋ねてみるといいという。

 すると、「覚えていない」といいつつも、1つや2つは、本の内容を思い出す。記憶は「芋づる式」に他の情報と結びついている。例えば自転車のカギを取りに部屋に来たことを忘れた場合。何かちょっとでもいいから思い出してみるといい。夕食の買い物に行こうと思ったことは覚えている→財布を持つのも忘れていない→着替えもした…ではなぜこの部屋に来たのか。そうだ自転車だ。自転車のカギを取りに来たのだった。

 このような具合に少しずつでも、思い出せることを思い出していくと、最終的に答えにたどり着くことができる。

 また記憶は場所との結びつきも強い。今、この部屋に来た理由を思い出せないなら、ひとつ前の部屋に戻るのも解決策となる。

 このほかに、「火を消さずに家を出てきた」「どんな字だっけ?」「出すのを忘れていた」「傘を置いてきた」…こんな悩みがあるのであれば、やはり短期記憶とワーキングメモリを使いこなすコツを学ぶと良いだろう。詳しくは本書を参考にしてほしい。

 最後に宇都出氏からこんなメッセージをお届けしよう。

人間とは忘れる生き物。忘れることは、人間が健全に生きるために持ち合わせている能力です

 忘れないと、つらいこと悲しいことも全部覚えていることになる。そんなストレスが溜まらないように人類の脳は「忘れる」ことができるのだ。忘れることもストレス対策の1つ。そんな風に考えると気持ちがラクにならないだろうか。

文=武藤徉子