正社員と非正社員、まだまだ多い地味で身近な格差の話
公開日:2017/4/5
最近目にした話題で、「NTTグループが、正社員に支給していた食事補助を廃止し、フルタイムで働く契約社員も対象に加えた手当を新設することを決めた」というものがありました。
これまでは、社員食堂などで使える月額3500円相当の食券や電子マネーを支給していたそうですが、これを廃止し、代わりに仕事と生活の両面から支援する「サポート手当」として、フルタイムの契約社員も対象に加えて、正社員と契約社員に同じ月額3500円を支給するよう改めるということです。「同一労働同一賃金」を先取りする事例として、注目されているそうです。
消えない、もっと地味で身近な格差
こういう取り組みは、正社員と非正社員の格差を是正する動きとして、それなりに歓迎されることなのかもしれませんが、私がこの話題から思ったのは、正社員と非正社員の格差には、金銭的な待遇のように目に見えやすいものだけでなく、もっと地味で身近な格差、区別(差別?)というのは、日常的な仕事の上でも、思った以上にたくさんあるということです。
例えば、ある会社では、週に一回、各部署単位で全社員が集まって情報共有をする部門ミーティングがあります。ただし、契約社員や派遣社員はそこには参加しないことになっています。会社からの連絡事項などで、正社員だけに伝えるものがあるためだそうですが、契約社員や派遣社員に聞かれて困るような話題が出たことは、今まで一度もありません。
また、ある会社では、様々なレクレーション行事を行う社員親睦会がありますが、正社員でなければ入会できません。非正社員の場合、有期雇用であることから、入退会やそれに伴う会費の天引き手続きなどが面倒だからだそうです。
さらにある会社では、盛大な忘年会が恒例行事ですが、参加できるのは正社員だけで、契約社員ほかの非正社員には、どんなに勤続が長くても、親密な関係であっても、声をかけないのだそうです。式次第の中に社員表彰があり、その対象が正社員だけであることと、雇用形態がいろいろの非正社員に声をかけようとすると、どこまでの人を対象にすればよいのかという線引きが難しいので、すべてを対象外としているそうです。
他にも、非正社員には名刺が用意されなかったり、名刺はあっても紙質が違っていたり、入館証のデザインが違っていたり、メールアドレスの命名規則が違っていたり、会社支給のパソコンのスペックが低かったりという話を耳にしたことがあります。
単なる「区別」も、立場によって見え方が違う
これは正社員から見れば、ただの「区別」で合理的なのかもしれませんが、非正社員の側から見たとき、そこに納得できる合理的な理由がなければ、それは「差別」としか感じられません。また、こんな「差別」のような「区別」というのは、受ける側にならなければ、なかなか気づくことができません。待遇としては明記されないような小さなことも数多いですが、それが積み重なれば大きなものになっていきます。一種の「パワハラ」という要素も含んでいるように思います。
こういうことは、組織への帰属意識や仕事への責任感といった面でも、プラスに働くことはありませんし、それは働く側にとっても企業側にとっても同じで、デメリットしか生まないと思います。
今は給与や労働時間など、基本的な労働条件を中心とした「均等待遇」が強調されていますが、こんな現場の細かいマネジメントレベルの話でも、たくさんの格差、区別、差別があります。本当の意味での均等待遇となるためには、このような地味で身近な格差にも、もっと目を向けていかなければなりません。それまでには、まだ相当な時間と努力が必要ではないかと思っています。
文=citrus ユニティ・サポート小笠原隆夫