「一日以上誘拐された女性は犯人と結婚しなくてはならない」――世界のびっくり文化
更新日:2017/11/12
まだまだ世界には「未知」がある……! とドキドキしながら読めた『なるほど! ザ・民族図鑑』(島崎晋/宝島社)。こちらは現代における、世界中の「民族」を、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアといった居住地域ごとにまとめ、あまねく紹介している一冊だ。
その中から、特に「びっくり」した「文化」「風習」をご紹介しよう(ちなみに、本書では「生活、風俗、習慣など、文化的な特徴」が同一である人たちを「民族」と定義している)。
〇ビシュノイ族―野生動物に母乳を与える部族
インド北西部のラジャスタン州、グジャラート州、ハリヤーナ州の砂漠地帯に暮らす「ビシュノイ族」は、極端なほどに野生動物を神聖視している。この考え方のベースになっているのは、ヒンドゥー教から発展した独特の教養だという。
ビシュノイ族は戒律に従い、殺生を行わず、飲酒をしない。それ以上に、「野生動物や樹木は積極的に守るべき」という考えがある。
そのため、親とはぐれた子どもの鹿に、人間の女性が母乳を与えることも珍しくないとか。また、18世紀には森林伐採に反対した300名以上のビシュノイ族が抗議のために自ら命を絶つという事件まで起きているそうだ。
〇キルギス―1日以上誘拐された女性は犯人と結婚しなくてはならない
中央アジアに位置する小国・キルギス。ここには「アラ・カチュー」(誘拐婚)という習慣が残っている。
男性は気に入った女性を強引にさらうことがある。理由は「プロポーズを断られた」「デート中に結婚したくなった」さらには「通りがかりの女性を見て」といった、とんでもないものまで。
連れ去られた女性は、一晩男性の自宅に監禁され「ジュールク」という花嫁の象徴の白いスカーフが持ち込まれる。これを被れば服従を意味し、婚約が成立する。男性の親族も説得するが、拒否する女性もいるそうだ。
だが、男性の家で一晩過ごしてしまった女性は、実家に戻っても「そのまま嫁いだほうがいい」と自分の親にも説得される。周囲の重圧を押し切って拒絶しても、「誘拐の評判」が広まり、その後の結婚が困難になるという。……もはや、誘拐された時点で女性にとって「詰んだ」ことになる、なんとも驚きの伝統だ。
〇ピダハン族―時間を表す単語を持たず、「いま」を生きる少数民族
南米ブラジル、アマゾン川流域に住むピダハン族は、他言語とは隔絶された独自の言語(ピダハン語)を話す400人ほどの人々。
彼らは色や数、時間を表す言葉を持っていない。未来と過去、母親と父親、左と右を区別することもないという。言語学者の研究によれば、彼らは「直接目にしたもの以外は口にしない」のだという。
時間に追われる現代人にとって、「いま」を生きるピダハン族は、ある意味、うらやましいとも思わないだろうか?
自分の「当たり前」が簡単に壊されてしまう≪驚き≫が、世界には詰まっている。
文=雨野裾