あなたの「未来」は大丈夫? みじめなおっさんになるか否かは「今」の行動次第だ!

暮らし

公開日:2017/4/12

『28歳のリアル』(人生戦略会議/WAVE出版)

 厳しい現実を実感する。「○○すれば人生うまくいきますよ」とか、そういう甘さの一切ない、まさに「リアル」を突き付けられるのが『28歳のリアル』(人生戦略会議/WAVE出版)。本書は「28歳」という年齢で人生を区切った時、「今すべきこと」を的確に(痛いほど……!)教えてくれる実用書だ。

 なぜ「28歳」なのかというと、人生を84歳までと仮定した時、28歳は3分の1を終える節目の年齢だからだ。つまり、28年間のターンが残り2回やってくる。この残り時間を短いと感じるか、長いと思うかは人それぞれだが、「今」を過ぎてからのんびり悠長に考え始めては、「遅い」現実はいくつも存在する。

「人生は35歳までに決まる」。28歳なら――アラサーなら、残りは数年。
この残された時間をどう使うか、真剣に考えなくていいのだろうか?

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 本書は仕事、転職、お金、結婚、住宅、健康、老後のテーマごとに、アラサー男性、女性が自分の位置を認識し、激変する価値観に適応するための、様々な「見解」が書かれている。

 例えば「仕事」。「これを知らないと転職に失敗する」と注意喚起されているのは、「生活に困るような状況で転職活動をする」こと。転職活動中は無収入でも、ある程度の期間は生活できる「蓄え」がないと、納得のいかないまま再就職し、また転職するという負のスパイラルに陥る可能性も。失業保険についても言及されているし、「先輩たちに学ぶ転職の『コツ』あれこれ」も参考になるだろう。

「結婚」のテーマでは、結婚にかかる費用といった数字的な情報から、「愛」についてという哲学的なことまで触れられている。28歳が知っておきたい「愛」については、「愛がある」のと「相手に愛が伝わる」のはまったく「別もの」ということ。つまり、「愛してる」と言うだけではなく、「愛してるから、君のために仕事をがんばる」といった具合に「行動に移せ」と。28歳の「愛」は、囁くだけではダメなのだ。

「お金」のテーマでは、残りの人生にかかる費用をざっと算出してくれている。

 結婚(400万円)、出産(100万円)、マイホーム購入(頭金として300万円)、子どもの進学(合計500万円)、子どもの養育費(1000万円)、子どもの結婚(祝い金100万円)、60歳以降の生活費(年300万円)……。

 子どもを産むか否か、賃貸かマイホームかなどで、かかる費用は変わってくるが、なんにせよ、生きるにはお金がかかるのだ。そのことを頭に入れて、今後の人生プラン「何を捨てるか」「何を得るか」、じっくり考えていかなければならない。

 本書は、決して「こうした方がいいですよ」という選択をあなたに勧めるようなことはしない。転職にしても、結婚にしても、住まいの問題(賃貸か、分譲か、戸建てか等々)にしても、「どちらにせよ、リスクがある」という情報を詰め込んで、「あなたはどっちを選ぶ?」という選択肢を与えてくれているのだ。

 楽観的な記述はないし、現実の大変さが身に染みる。けれど、この「厳しさ」が自分の背中を押してくれると信じられる。最近の「なんでも手軽にうまくいく」ことばかり教える実用書とは違った趣で、背筋が伸びる気持ちになった。

「今」読むべき、一冊だった。

文=雨野裾