「逃げ恥」以上の“ムズキュン”! 星野源初主演作『箱入り息子の恋』も大反響で小説版が重版出来!

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更新日:2017/4/17


『箱入り息子の恋』(市井昌秀、今野早苗/ポプラ社)

 俳優、シンガーソングライター、文筆家と多方面で活躍する星野源の人気はとどまることを知らない。 昨年10月期のTBS系連続ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』出演、作詞作曲を手がけた主題歌「恋」の“恋ダンス”とともに巻き起こした社会現象。今年3月に発刊されたエッセー集『いのちの車窓から』はエッセー集としては異例の累計発行部数24万部を突破。

 そして、今、「逃げ恥」以前の星野源の出演作にも注目が集まっている。たとえば、2013年に公開された星野源の初主演映画『箱入り息子の恋』は、リバイバル上映がなされ、小説版も大反響につき重版出来。小説版にしろ、映画にしろ、草食系男子の恋愛への奮闘に思わずキュンとさせられてしまうストーリー展開に、多くの人が心奪われている。

 主人公は、35歳独身、「年齢=彼女いない歴」の市役所勤めの公務員・天雫健太郎。実家暮らしで自宅と職場をただ行き来するだけの生活を送っている息子の姿に心配を覚えた両親は、子ども不在の状態で親同士のみでお見合いを行う「代理見合い」に参加する。しかし、あまりに魅力に欠けるプロフィールのためか、声をかけてくれたのは一組だけ。両親がそんなことをしていることを知らないある日、健太郎は、夕立に降られた美女に傘を差し出す。そして、この美女こそ、「代理見合い」で健太郎の両親に声をかけた今井家の一人娘・奈穂子だった。見合いの席で再会を果たす2人だが、突きつけられたのは、奈穂子が8歳の時から視力が落ちる病にかかり、現在は全盲であるという事実。彼の行く手を阻む数々の障害に健太郎は…。“草食系男子”の健太郎は、奈穂子への恋を成就させることができるのか。

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今まで恋愛をしたことがない健太郎だが、両親に大切に育てられてきたからなのだろうか。とてもひたむきでまっすぐな心を持っている。奈穂子のことを哀れみから特別扱いするのではなく、彼女の意思を尊重しながら、優しく振る舞う

 姿に奈穂子は次第に心惹かれていく。健太郎は元々向上心のかけらもなく、これから先どう生きていくかの展望もなかった。しかし、奈穂子への思いは、そんな彼を変えていく。奈穂子に恋をすることによって、彼は確かに強くなっていく。

 子どもは親の知らないところで成長する。とはいえ、それは、親から見れば脅威であり、自分の考えるレールを外れていく子どもを引き止めずにはいられない。奈穂子の親からすれば、頼りない男に大切な一人娘を託せるわけもないし、健太郎の親からすれば、大切な一人息子の相手ならば、奈穂子以外でもいいはずだと考えるのも無理はない。健太郎と奈穂子の障害となるのは、奈穂子の目が見えないということではない。2人の幸せを願っているはずの彼らの両親の存在が確かに彼らの障害となり、2人を苦しめる。子どもが見つけた幸せと、親が求める幸せが一致しないこともある。子どもにとって親離れが難しいように、親にとっての子離れはこんなにも難しい。

「『貯金が趣味は』?」「『計画的』」
「『三十五歳にして実家暮らし』は?」「『家族思い』」
「『彼女いない歴三十五年』は?」「『仕事熱心』」

 「代理見合い」の場面で、そんな風に言い換える練習をする場面は、おかしい。キュンキュンさせられながらも、ときにコミカルに、ときにシリアスにと、さまざまなスパイスの効いた作品だ。小説版と映画をあわせてみれば、楽しさは倍増。想像力をかきたてられるような胸キュンな小説版と、欠点だって数多くある“普通の人”を魅力的に演じてしまう星野源の演技力のマッチは絶妙だ。そして物語の終盤では、なんとベッドシーンも…! 『箱入り息子の恋』は、星野源ファンにとって「逃げ恥」以上の“ムズキュン”を感じさせる作品といえるかもしれない。ホシノミクスの今、星野源の原点ともいえる初主演映画を小説版とあわせてぜひともあなたも観てみてほしい!

文=アサトーミナミ