「Mの字の谷間に興奮する」――ツッコミの兄とボケたおす弟。ふざけすぎる高校生兄弟の2人暮らしが話題のギャグマンガ、続々重版中!
公開日:2017/4/19
「Yもそこそこ興奮する」――。関西のとある閑静な住宅街に住む高校生「本橋兄弟」の「まともな人間はいないのか!?」と叫びたくなる日常を描いたギャグマンガ『本橋兄弟』(RENA/リイド社)は、今、個人的に一番ハマっている一冊だ。
兄の貴也(たかや)。高校2年生(留年)。19歳。弟の智也(ともや)。高校3年生。18歳。貴也はこのマンガ内で唯一の常識人であり、ただ一人のツッコミ役。弟の智也は、後輩女子から「カッコいい~」「クールなとこがいいよね~」と好意を寄せられるほどの硬派な男子学生だが、かなりの変人。
「Mの字の谷間」や「Y」の字に興奮するのは弟の智也だ。彼はキャラクター弁当を作り、兄に渡し、「え、何のキャラ?」と聞かれ「俺」と答える男。さらに「ハムスターかわええやろ」と、スマホで画像を送った兄・貴也への返信は「俺みたい」。無視して貴也が「かわええけど、めっちゃちっさいよなぁ」とコメントを送ると、「俺の何分の一くらい?」と返してくる男だ。
智也(弟)も大概アレなのだが、貴也(兄)の周囲には変人しかいない。幼馴染の井口恵は、女装趣味のある美青年。美少女アニメキャラの「リルム」を偏執的なまでに愛している。クラスメイトの内田登美江は、見た目は美女の隠れ腐女子。貴也と智也を見て、「どっちが受なんやろ」と考えている。さらにバイト先のオーナー真田は、イケメン実業家でありながら貴也(兄)を溺愛するストーカー。
そんな変人たちとツッコミ役の貴也が繰り広げるギャグマンガ。オーナー真田のおかげで、BL要素も含まれた「おいしい」本作(貴也はイヤがっているが……)。
基本的には「笑える」。シュールな笑いだったり、腐女子ネタの笑いだったりと、笑いの説明をするのは難しいので省くが、とにかく面白い。
だが、そんな笑いの中で突然オチのない「泣けるホームドラマ」話が挿入される。
本橋兄弟が2人暮らしなのは、幼い頃に両親が亡くなり祖母の手で育てられ、その祖母も亡くなってしまったから……なのだが、その祖母と幼少期の本橋兄弟の話が胸にジンとくる。
「私が元気な内にお金の使い方や生活の知恵も、教えられることは全部教えておくわね」とおばあちゃん。両親を亡くし、自分だっていつまで2人の傍にいられるか分からないおばあちゃんは、本橋兄弟に家事や料理を優しく丁寧に教え、「でも、一番大切な事は、何があっても2人で助けあっていくんよ。おばあちゃんからのお願いね」と幼い兄弟に話していた。
この話にギャグは一切ない。「Mの字の谷間に興奮する」とか言ってたギャグマンガとは思えない、ちょっと涙腺が緩んでしまうお話なのだ。この落差、すごくないだろうか。ギャグと「うるっ」が一冊で味わえて、何だかお得な気分にさえなってくる。
本作はピクシブコミックでも試し読みができるので、興味のある方はぜひ!
文=雨野裾