「話が伝わらない」がなくなる! 説明が分かりやすい人が使っている“数学コトバ”って?

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公開日:2017/4/18

『「伝わらない」がなくなる 数学的に考える力をつける本』(深沢真太郎/講談社)

 池上彰氏や林修氏の話がわかりやすいとよく言われるが、これが案外簡単ではない。

 例えば、

「昨日見たテレビ番組の面白さを伝えたい」
「駅前にあるレストランの素晴らしさを教えたい」

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 このように思っていても、相手に上手く話すことができない、という人は少なくないだろう。そんな伝える・説明することが苦手な人にぴったりなのが『「伝わらない」がなくなる 数学的に考える力をつける本』(深沢真太郎/講談社)だ。

 本書は数学の考え方から“コトバ”にアプローチする内容となっている。「数学でコトバを?」と疑問に思うかもしれない。しかし、数学的思考であれば短く・速く・正確に伝えることができるという。しかも、難しい公式や計算などは一切使わないので「数学なんてできない…」という人でも安心して読み進めることができる。以下に本書で述べられている、数学的に物事を伝える極意の一部を紹介したい。

「一生懸命準備した。しかし、成功した」
「一生懸命準備した。だから、成功した」

 以上の二つの文章を読んで、おかしな部分を見つけることができるだろうか。二つの違いは「しかし」と「だから」のみ。たった3文字だけであるが、「しかし」の文に違和感を覚えるという人が多いはず。

「一生懸命準備した。しかし…」と続けば、自然と結果は「失敗した・ダメになった」と予測して読もうとする。これは「しかし」というコトバの働きによるもの。話が脱線してしまいそうな時、話の方向性を示して、ブレずに伝える役割を担っているのだ。本書では、この方向性を決めるコトバを“数学コトバ”と呼び、意識して使うべきだと述べている。

 この“数学コトバ”は、要するに国語の授業で習う“接続詞”。「だから」は順接、「しかし」は逆接の接続詞だ。他にも「つまり」「要するに」は前出のコトバや説明を言い換えてわかりやすく伝えるサイン、「なぜなら」はこれから理由を説明するというサインとなる。 本書では“数学コトバ”の例が他にもあるので是非とも確認いただきたい。

 そして、数学コトバ以外のわかりやすく・簡潔に伝える方法として「短文で伝える」がある。例えば、話をしていると「あれを伝えたい」「これも伝えたい」と考えてしまうことはないだろうか。そのまま頭に浮かんだことを口にすれば、ダラダラ長くなってしまい、本当に言いたかったことがぼやけてしまう。これを防ぐために短く伝えようとすることはとても有効なのだ。

 数学の勉強は苦手だった。高校生の時には「数学の勉強をしたところで、微分積分なんて社会に出たら使わない」と言っていたことを思い出す。しかし、本書を読み、数学に対する印象は変わった気がする。「物事の本質を見抜き、その本質をわかりやすく・簡潔に伝える」勉強と本書で述べているのだが、確かにその通りかもしれない。そんなことを考えていたら、今までの数学嫌いな自分では考えられないくらい数学に前向きな気持ちになれた。よし! もう一度数学を学び直してみよう。まずは小学生の分数あたりから、かな…。

文=冴島友貴