誰にでも訪れる40歳「とある独身女性」の本音
更新日:2017/5/8
『40歳になったことだし』(森下えみこ/幻冬舎)は独身・ひとり暮らし歴を更新中の著者、森下えみこさんが40歳にして初めて上京する様子を描いた、ゆるーい雰囲気が魅力の描き下ろしコミックエッセイだ。
静岡県でひとり暮らしをしている著者は、中学の同窓会のハガキを前に「中学のってめずらしいな~」と思い、ハッと気がつく。「そうか40歳の節目でってことか」。40歳ともなると「みんなもう会社で役職ついてたり結婚して子供ももう大きかったりするのかなぁ…」
30代の時は「話に入れないこともあるからなぁ」と独身であることを理由に同窓会を欠席していた。未知なる40代に「みんなどんな40代になってるか知りたい…」「同い年の人と昔を懐かしみたい…」と思いつつ、名札を作るためのプロフィール記載欄に氏名(旧姓)という欄を見つけ、心が折れそうになるのだった。
■落ち込みかたも変わる40代
基本的に落ち込みやすい性格だという森下さん。皆で楽しくパーティーをした帰り道に「楽しかったな~」と思えば、やりたい仕事、パートナー、素敵なマンション、オシャレなセンス、そして家庭……。「いくつも持っている人っているんだなぁ」と落ち込みかける。
落ち込むのは疲れるので、何か楽しいことを考えようとするものの、今度は「私の楽しいことなんてさ…他の人からしたらたいしたことないんだろうな…」と別のことに落ち込んでしまう。
比べるならもっと自分と似た人でなくちゃと、頭の中に浮かんだのは20歳で夢に破れ無職・貧乏、仕事が見つからず恋人とも破局、昼・夜バイトのWワークでヘロヘロ…そんな過去の自分だ。すると不思議と落ち込みは止まって「40歳よくここまできたもんだ、よし」と気持ちが切り替わるのだった。
■「なんで東京に来たんですか?」
大抵の人に尋ねられる、なぜ東京に来たのかという質問に「東京に住むのにずっと憧れてて…」「やっぱり東京に来た方が仕事やりやすいかなと思いまして」などと答えながら、改めて聞かれると「なんかもっとあるはずなんだけど…」と自分のことなのに上手く答えられないという森下さん。理由を聞かれる度に、来たことに自信がなくなっていく中で「あ」と思う瞬間があったという。
久しぶりに会った出版社の人との立ち話で「東京にはお仕事ですか?」と聞かれ、「今東京に住んでます」「はい~なんかいろいろがんばりたくて」と答えたときのこと。
「40代」「独身」「仕事はフリーランス」「上京」。
「まだまだこれからとも、かといってあきらめたとも、なんて言っていいのか」
モヤモヤいろいろと考えていたが「もうひとがんばりしたいかな」そう思いながら駅の改札を抜け、森下さんは続ける「40歳になったことだし」と。
ある40歳のその言葉に、40歳もその先もまだまだ捨てたものじゃなさそうだと、心がほっこりする一冊だ。
文=トトノうさき