「GINZA SIX」にもカボチャが! 草間彌生はなぜ世界的アーティストになれた? 現代アートを知る「2つのキーワード」
更新日:2017/11/12
近年の草間彌生ブームで、国立新美術館で開催された草間彌生展は、チケット売り場もグッズ売り場も、クサマーの大行列! しかし実のところ、楽しみ方がイマイチわからない、いやまったくわからないという人も多い「現代アート」。画家の知人は、若い頃にエルンスト(シュルレアリスムの画家)の絵を見て強い衝撃と影響を受けたという。そのような芸術家の感性は望むべくもないが、楽しむhow toを知ることで、自分なりの視点が見つかるかも知れない。そんな期待に応えてくれるのが『わかりたい! 現代アート』(布施英利<〈ふせ・ひでと〉:著、TYM344:画/光文社)だ。著者の布施英利氏は、美術批評家であり、解剖学的視点から美術を研究する「美術解剖学」の専門家。掲載されている絵は、美術家のTYM344氏の作品である。
現代アートの始まりは、100年前。画家のデュシャンが、既製品の工業製品、しかも「便器」にサインを入れた「泉」というタイトルの作品を発表したことだ。
「泉」から100年の間に、たくさんの現代アート作品が作られたが、それらを理解するうえで大事なのが「モダン」「ポップ」の2つのキーワードだそう。本書は20世紀のアートの、前半「モダンアートの時代」、後半「ポップアートの時代」を、各17名のアーティストからひもといている。
モダンアートの画面は、円や四角、線の交差、シンプルな色面で構成されている。「具象から本質だけを抽出し、感情を抽象的に表したもの」がモチーフとなっているため、なかなか理解が難しく思えるが、カンディンスキー、モンドリアン、ピカソ、マグリットなどは、日本でも人気がある。
ポップアートは、存命のアーティストも多く、時代、世代を超えて継承されている「すべての人に開かれたアート」だ。巨匠アンディ・ウォーホルの、キャンベルスープ缶や、マリリン・モンローの顔が並ぶ作品は誰もが目にしたことがあるだろう。ウォーホルは、ポスターの缶や人物の顔写真など、メディアから抽出したイメージで作品を作った。わざわざ絵画にすることで現代に存在する意味を与えたのだ。自然など描写しないのがポップアートなのだ。
草間彌生の作品も、印象派、点描派、抽象画、ミニマル・アート(デュシャン「泉」を経てのスポットペインティング)というアートの歴史の文脈から見ることができる。そこに日本の伝統的なデザインや、女の子のサブカルである「かわいい」という要素や、宇宙の星や物理学のミクロの点とあいまって、シンプルなのに深いアートとなっているのだそう。
現代アートを「わかりたい」人のために書かれた本書を読むと、「わからないけど、なんとなく面白い」から、一歩踏み込んだ鑑賞ができるようになるだろう。自分とアートをつなげる新しい道ができた感覚をぜひ味わってほしい。
文=泉ゆりこ