専業主婦なんて論外!仕事も趣味も愛もなきゃ!フランス人の「自分らしく生きる」コツ
公開日:2017/5/8
日本とフランスの「架け橋」として、東京・神楽坂とパリを往復している私ですが、ときどき、日本人とフランス人の違いに驚くことがあります。たとえば、
フランスでは結婚率は低いけれど、出生率は2.0を超えている。
フランスの男と女は、「仕事では対等」だけど、プライベートでは男はジェントルマンとして、女性を喜ばせる。
フランス人はヴァカンスをたっぷりとるのに、GDPでは世界5位。
こんなフレンチパラドックス、みなさんはどう思いますか?
■優秀な日本女性の「専業主婦願望」。フランス人は「家事と子育て」だけでは満足できない!
私は以前、慶應義塾大学で講師を務めていましたが、女子学生はとても優秀でした。外国語も上手で、自分の言葉ではっきりと意見をいえる。でも、そんな優秀な女子学生たちも「結婚したら家庭に入りたい」と考えているケースが増えているとか。結婚・妊娠・出産・育児のために、やりがいのある仕事を続けることをあきらめる日本女性が多いとは知っていましたが、最初から「専業主婦」を望む女性が多いなんて!
厚生労働省が行なった意識調査によると、日本の15~39歳の独身女性の3人に1人が「専業主婦になりたい」と望んでいるのだとか。その理由を複数回答で選んでもらったところ、「女性には家事や子育てなど、外で働くより大事なことがあると思うから」が61%、「夫がしっかり働けるようにサポートするのが妻の役目だから」が29%だったそう。
日本の女性就業率は先進国では最低レベル。この結果には海外のメディアも注目していて、フランスのフィガロ紙でも「驚くべき結果」として取り上げられたことがあります。
■フランスには「主婦」という概念がない!?
ちなみに、フランスでは現在「専業主婦」という言葉はありません。「Je suis femme au foyer.(私は専業主婦です)」とフランスで自己紹介をしたら、いまのティーンエイジャーは首をかしげてしまうかも。恐らく、意味が通じないと思います。アメリカのドラマシリーズ『デスパレートな妻たち』を見て、「housewife」という言葉があるのは知っている人もいるかもしれないけれど、いまやフランスにはその概念自体がないのです。
かつてはフランスでも、結婚をして家に入る女性がいました。でも、1970年代に女性の地位改善が進み、男性と同じように社会進出できるようになりました。フランス人女性は「経済的に自立しているのが当然」と思っているし、企業の中でも管理職の40%は女性。日本と違って、女性もどんどんポジションが上がるから、仕事が面白くなって、収入も増える。
フランス人女性も、家事と育児はもちろんやります。でもそれだけでは、けっして満足できないのです。
いくつになっても、ひとりの女性として美しく、魅力があること。そうあるためにも、家庭や子育てにかかりきりにならずに、仕事を持ち、趣味や遊びも楽しめること。女性の幸せを考えるうえで、そして「少子化問題」を考えるうえで、大切なテーマだと思いませんか?
■セックスレスになったら、すぐに別れるフランス人
フランスでは、結婚したカップルの4組に1組、パリでは2組に1組が離婚するというデータがあります。セックスレスになっても一緒にいる日本人とは違い、アムールがなくなったらすぐに別れます。
日本のように協議離婚ではなく、弁護士を雇い、家庭裁判所での離婚になりますが、最近は弁護士を雇わなくてもできるようになりました。期間は半年程度、費用もかかります。 ただ、日本のように親権を争うことはなく「共同親権」です。子どもは1週間とか1カ月ごとに父親と母親の家を行ったり来たりするケースもあるし、ティーンエイジャーになると、子どもの意思で決めるケースも多い。
親に新しい恋人ができて一緒に暮らすようになったり、結婚したりすると、突然、自分と同じ年齢のきょうだいができることもあります。これは、子どもたちにとっても、うれしいこと。また、親のほうも、1週間は、「新しくできた大家族」と過ごし、次の1週間は、「新しいパートナー」と二人で過ごすといったライフスタイルになります。「今週は、子どもは父親と過ごすから、自分は新しいパートナーと過ごす週」と思っていたのに、突然、子どもが家に戻ってきてしまい(カギを持っていますから!)、大慌て……なんていうハプニングもあったりします。
こんなバラエティに富んだ生活、新しい生き方を楽しめるのも、フランス人ならではと思います。個人主義で、離婚率も高く、でも家族の絆を大切にする。フランス人は〝絶妙なバランス〟をとって生きていくのが上手なのかもしれません。
【関連書籍】
文=citrus エッセイスト・国際ジャーナリスト ドラ・トーザン