おうち料理で科学を学ぼう! GWにもオススメ 家族でできる「おいしい実験」

スポーツ・科学

公開日:2017/5/3

『おもしろい! 料理の科学(世の中への扉)』(平松サリー/講談社)

 今年のゴールデンウイークは、カレンダー通りだと5連休。遠出も十分可能な長さではありますが、「混み合う場所はちょっと…」「あんまりお金も使いたくないし…」ということであれは、お家でのんびり過ごすのも良いかもしれません。今回はそんな連休中のレジャーにもおすすめ、手軽で美味しいお料理を作りながら、科学の勉強もできるという、お子さん向け書籍のご紹介です。

おもしろい! 料理の科学(世の中への扉)』(平松サリー/講談社)はその名の通り、身近な料理に利用されている科学について説明するとともに、科学的知識を活かしたレシピを紹介した書籍です。タイトルにある「世の中への扉」とは、講談社が手掛けている、子ども向けノンフィクションシリーズのこと。社会や科学、スポーツといったテーマを中心に、若い好奇心に寄り添い、素朴な疑問に答える好評書籍です。

 児童書とはいえ、解説はかなり充実しています。例えば4章「色が変わるおもしろ食べもの」の部分では、食べ物に含まれる色素と、その性質を活かした料理を紹介しているんですが…さて、ここで問題です。市販のミックス粉で作った生地に、ブルーベリージャムを混ぜてホットケーキを作ると、焼き上がりはどんな色になるでしょうか? 素直に考えればブルーベリーの色――赤みの掛かった紫色になりそうなものですが、実はこれ、ブルーベリーに含まれる紫色の色素・アントシアニンの性質を活用したレシピなんだそうです。

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 アントシアニンは中性では紫色なのですが、酸性条件下では赤っぽい色に、アルカリ性条件下では緑色や青っぽい色に変化するという性質があります。…一定以上の年代の方には「紫キャベツ液」という表現のほうが伝わりやすいでしょうか。理科の教科書ではあまり大きく扱われていなかったけれど、資料集などの副読本にはカラー写真が掲載されていた、あれです。あの紫キャベツ液も実は、アントシアニンの性質を利用した指示薬だったんですね。

 一般的なホットケーキミックスには、生地を膨らませるために重曹(炭酸水素ナトリウム)が含まれています。重曹は水と混ぜて加熱すると、分解して二酸化炭素と炭酸ナトリウムに変化するんですが、この炭酸ナトリウムは(重曹よりも強い)アルカリ性なので、ブルーベリージャムに含まれるアントシアニンの色も、相応の変化を起こすことになるのです。ですから、ブルーベリージャム入りのホットケーキは、焼き上がると…? 実際の色はぜひ、ご自身の目で確かめてみてくださいね。

 同書にはこのほかにも、

・ほうれん草やブロッコリーを茹でるときに「たっぷりのお湯」を用意するのはなぜか
・「ほくほく系」のじゃがいもと、「しっとり系」のじゃがいもは、何が違うのか
・根菜類を茹でるときに「水から(お湯が沸かないうちから)」鍋に入れるのはなぜか

 …などといった解説や、それに関連したレシピが紹介されています。大人でも、これらの問いにきちんと答えられるのは、ごく一部の方だけではないでしょうか。どれも身近で手に入りやすい材料を用いていますので、保護者の方が子ども向けの料理本を眺めているときにありがちな「一般家庭にそんなものはない!!」というストレスも回避できるはずです。

 本文には少し難しめの言葉も使われていますが、見慣れない用語や漢字には読み仮名が振られていますので、小学校中学年くらいからひとりで読めるのではないでしょうか。また、少々気の早い話ではありますが、夏休みの自由研究に向けてヒントを与えてくれる1冊でもあります。毎年、始業式直前まで苦しんでいるお子さんをお持ちの方、今のうちから手に入れておいて損はありませんよ!

文=神田はるよ