「愛想笑い」で疲れた人必見。いい人でいることは人生を無駄にする?

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公開日:2017/5/5


自分の意見や本音を言わず周囲に合わせているだけの人は、何を考えているかわからない人物に映るので、周りの人も本音でぶつかってきてくれません。すると、仲間の中にいてもなぜか疎外感や孤独感を感じたり、「都合のいい人」と映って気安くお願いごとをされたり、「どうでもいい人」と映って軽くあしらわれたりします。(はじめにより)

『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(午堂登紀雄/日本実業出版社)の冒頭には、こう書かれています。

 他人に嫌われないよう、万人に好かれるよう行動する「いい人」にとっては、辛辣な言葉かもしれません。

 といっても、著者である午堂さんは決して「いい人」を否定しているわけではありません。

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 いい人でいたい。それは誰でも持っている自然な欲求であり、様々な人と関わりながら生きるうえで大切なことです。しかし強すぎる「いい人欲求」が、自分の人生をつねに他人の目を意識した息苦しく窮屈なものにしてしまうリスクを指摘しているのです。

 では、具体的に「いい人」が陥りやすいシチュエーションとはどういったものなのでしょうか? また、その解決策とは? 本書の第2章「対話」から、3つのポイントをみてみましょう。

1、「愛想笑い」で疲労困憊

 楽しくないのに、周りに合わせて楽しいふりをする。プライベートで悲しいことがあったけれど、周りに気をつかわせたくないから明るく振る舞う。

 自分の感情とは違う表現をすることは「感情労働」と呼ばれ、精神的なストレスの原因となります。もちろん、仕事でやむをえない場面もありますし、不機嫌な表情をするわけにもいかないこともあるでしょう。

 しかし、「いい人」はつねに周りに気をつかい、愛想笑いをして、家に帰って一人になった時には疲労困憊……という傾向があるようです。

 自覚がなくとも「人と会うと疲れる」というのは、それなりに緊張を感じ神経をすり減らしながら人と接している証拠です。そういう人には、「人と会う日とまったく会わない日」を明確に区切るスケジューリングをしてみることを著者は勧めています。

 初対面の人と会う予定のある日は、その緊張状態のままいろいろな人との面会や面談をまとめる。そして次の日は、オフィスでのデスクワークに集中し、クールダウンするという感じです。

 仕事の性質や、周りの環境によってそう簡単にはできない人もいるでしょうが、疲労を蓄積させないためのひとつの方法です。

2、「断れない」で大切な時間を失う

 上司からの飲みの誘い、ママ友とのランチ会など、本当は行きたくないけれど「断ることができない」という人が多いのではないでしょうか。

「つき合いが悪い」と思われたらどうしよう、次から誘ってもらえなくなるのではないか、といった恐れを感じ断れないのが、「いい人」に見られる典型的な行動パターンです。

 しかし、断れないことで、せっかくの自分の時間をつまらないことに費やしても、見返りはなにもありません。さらに、大切な人生の一部を失うばかりか、お金すらも失うことになります。

 つまり、他人の目を気にして断れない「いい人」は、他人と自分の時間やお金を共有することでしか、自分の存在意義を感じられない人になる危険性を秘めています。反対に、自分がつまらないと感じる誘いを断る行為は、自分自身の時間やお金を大切にするということであり、それは自分の人生を大切にすることにほかなりません。

 だからこそ、自分の未来にプラスの影響を与えそうな誘い以外は、思いきって断ればいいのです。……けれど、それができないのが「いい人」なんですね。

 そこで役に立つのが、相手に「それなら仕方ない」と思わせる、「断りの鉄板フレーズ」を用意しておくことです。


 たとえば「その日はあいにく英会話の日なので」といった習い事や、家庭がある人であれば「僕が食事を用意する担当なんです」といったフレーズをつかう手があります。また2ヶ月後など、かなり先のスケジュールで誘われたというケースであれば、「ごめん、仕事の都合で、直前にならないと予定がみえないんだ……」などと約束を保留にしておく方法が考えられます。

 他にも「医者に血糖値が高いから外食は控えろと言われている」「子どものイベントがあって」「お金がない」なども考えられます。

 あくまで一例にすぎませんが、とにかく自分なりに相手が納得する断りのフレーズをあらかじめ用意しておき、とっさの誘いにも断る準備をしておくと安心です。

3、「他人に追随」して判断力が低下

「いい人」は他人と摩擦を起こさないよう、周りに合わせようとします。自分で判断することを避け、他人に従いがちです。それは、自分がなく、他人に追随する生き方ともいえます。

 自分の価値基準や判断軸がない人は、いいことも悪いことも含め、他人の影響を受けやすくなり、「あの人がいいと言ったから」「こういう意見があったから」と信用し行動します。そうした姿は「素直さ」として美徳にもなりますが、素直さと思考停止は表裏一体です。

 何かあったときに他人のせいにするような、自分で判断することを避けた生き方は、合理的・論理的な思考や決断する力の弱さにつながります。キャッチセールスや新興宗教に引っかかりやすい人に「いい人」が多いのは、そのせいかもしれません。

 こうした状況から脱するためには、自分の価値基準や判断軸に自信をもてるようになる訓練が必要です。その方法のひとつとして、著者が提案するのが、「自分のすべての判断と行動に理由をもつ」ことを習慣づけることです。

 たとえば、ちょっとした買い物でも、ただ欲しいというのではなく、「買って得られる具体的なメリット」を考え、買う理由をもつ。上司からの指示を受けて動いたとき、「指示されたから」ではなく、自分がなぜそのように動いたのか合理的に判断し行動する。

 このように、あらゆる判断や行動に、自分なりの根拠や理由を考える習慣をつけることにより、自分の価値基準が徐々に見えてきます。

 それはやがて、他人の意見に容易に流されることのない、強い判断軸を養う土台となるでしょう。

「いい人」でいることに疲れてしまった。周りの目を気にせず、自分らしく生きたいという人は、少なくないはずです。

 著者である午堂登紀雄さんはクビ同然で会社を辞め、転職先では疲弊して体を壊し、会社を立ち上げては撤退し、苦しみ抜いた末に「自分に正直な生き方」を手にしました。本書には、ときには耳に痛いフレーズも出てきますが、軽妙かつ痛快な語り口で、新たな生き方を気づかせてくれます。